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第一章
49繋がった絆
しおりを挟む長らくすれ違っていた絆は再び結ばれた。
しかしその絆を良く思わない者もいるのだが、そんなことに気づかないグレーテルは親子が仲睦まじく過ごすのを喜んだ。
「本日は王宮で過ごされるそうだ」
「それはようございました」
「何かしたのか」
朝食時にアスランが尋ねるも笑って誤魔化し、これ以上は何も言うことはなかった。
「でもようございました」
「グレーテル、王妃陛下は」
「やはり鬼姫様は優しい方でした」
「は?」
アスランは耳を疑った。
「前世の事があるから身構えられたようですが、心配し過ぎなのですわ」
「待て待て!鬼姫様…まさか、あの方は義姫様?」
「はい」
知らなかったアスランは呆然とした。
前世己が使える生母にはアスラン自身もツライ思いをして来た。
ただし、親子だから無条件に子を愛すなどと夢を見ているわけでない。
都合で捨てられたり拾われたりを繰り返していたからこそ家族の愛を知らないで育ったこともある。
だからアスランは解らない。
母親の愛情とその思いに。
愛されて大事に育ったグレーテルだからこそわかるのだ。
「あの方が…」
「まさか気づかれなかったのですか」
「まったく」
「まぁ、慧眼と言われたのに」
「くっ…」
時々アスランはこういったしくじりをするのだ。
完全無欠と言われているが実際はそうではなく野暮ったいのだ。
「私もこの国で再会するまで気づきませんでした」
「…ということは以前にも?」
「はい祖国で。馬車に置いてきぼりになっているときにです」
「詳しく話してくれるか」
事情がいまいちわからないアスランは一から説明を求めて来たのだ。
「そんなことが…」
「本当に不思議な縁ですね」
そう言いながら分厚い本に何かを書く。
「何をしているんだ」
「えっと、ルクシア様と交換ノートをはじめまして」
「交換ノート!」
年季の入った分厚い本を見ると互いに日記を書いている。
そこには可愛いイラストも描かれているのだが。
「先日、ルクシア様と文通なるものをしたいと」
「それで交換日記か…何故王妃陛下の名前があるんだ」
「なんか…妾も参加させろと」
「それっていいのか」
最初こそは二人だけだったのだが、参加人数が増えてしまったのだ。
「まぁ、お二人が仲良くなったのだからいいのでは?」
「まぁ、そうだが…」
ただしトラブルだけは勘弁をして欲しいと思う一方だ。
「それでなんですが」
「ん?」
「父の行方を捜しているのですが…」
「それか」
生活も安定して来たし、正式にアスランと夫婦になるためにも連絡を取りたいのだが、住所不定で困っていたのだ。
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