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第一章
47幼い王子の一歩
しおりを挟む片方聞いて沙汰するな。
ルクシアは今よりももっと幼い頃に国王に言われた言葉を思い出していた。
『よいかルクシア、お前は片方だけに耳を傾けるでない』
『父上?』
『お前はいずれ王となる。故に多くの声に耳を傾けるのだ…物事には表と裏がある』
当時は幼過ぎてその意味が解らなかった。
片方聞いて解らないなら自分で調べようと思ったのだ。
「グレーテル、俺探偵になってくる」
「はい?」
分厚い本を見せて訴えたのは、母親と疎遠になっている問題だった。
グレーテルはルクシアに助言をしたが、まさかこんなにも行動的とは思わなかった。
「俺、使用人に嫌われてる。だから聞いてもちゃんと教えてくれない」
「ルクシア様…」
「でもグレーテルは言ったから…母上は悪い人じゃないって」
「はい」
「小さい頃は優しかったんだ母上」
弟が生まれる前は毎日ではないができる限り時間の許す限り一緒にいてくれた。
「解らないんだ。俺が病気になった時も母上は醜いとは言わなかった…でも」
「王妃陛下はそんな軟弱な方ではありません!少なくともそう思います」
「だよね…母上はきっと何か理由がるんだよね」
曇っていた目は少しだけだが晴れやかだった。
これまでルクシアは母親に嫌われていると他の侍女に言われ、王妃側と敵対するユズリハに対しても心の内を話せないでいた。
だがグレーテルは派閥に関係ない。
あくまで公平な目で見て言葉でぶつけてくれた。
「ルクシア様、ご立派ですわ」
「俺、母上の事やっぱり好きなんだ」
愛されないなら嫌いになればいいと言い聞かせていた。
だけどグレーテルの言葉のおかげで自分の気持ちと向き合うことができた。
「嫌いにならなくていいよね」
「ええ、好きなものは好きでいいんです。私は骨董品が大好きですわ。甘いお菓子も…お野菜も」
「うん?」
「好きなもの好きと言って何が悪いというのでしょう。母上を好きなのがいけませんか?」
「俺、母上に会いに行くよ」
ぎゅっとグレーテルの手を握る。
「私も同行いたしましょうか?」
「いい…こっそり会いに行くから。バレたらまた怒られるし」
「はい」
グレーテルが一緒に来てくれたら心強い。
でも、アスランにばれたら怒られるのはグレーテルなのだから。
「でしたらお花を摘んでいってはいかがでしょう」
「花?」
「母君はどのようなお花がお好きですか」
「えっと…」
今の好みは解らない。
だけど昔好きだった花なら解る。
「思い出のお花をプレゼントしてはいかがでしょう」
「うん…」
最初の一歩を踏み出すべくルクシアは決意をした。
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