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第一章

44姉と弟

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しばらくグレーテルに謹慎を言い渡しながらもアスランは頭を抱えながら執務に励んでいた。


「アスラン、何をイラついているのだ」

「姉上…」

「まったく男がなんて情けない」


アスランの仕事はルクシアの補佐であるが、他にも仕事はある。
秘書のような仕事も兼任しているのでそれなりに忙しかったのだが、侍女長であるユズリハも多くの侍女を管理しなくてはならないので決して暇ではない。


「相変わらず惚れ惚れする腕だこと」

「そういいながら人の食事をつまみ食いしないでください」


ユズリハが今食べているサンドイッチはグレーテルが用意したアスランの昼食だった。


「うん、これがあの観賞用植物を使ったとは信じがたい。サラダも絶品じゃな」

「聞いていますか」

「聞いておるわ。以外にもグレーテルは好奇心旺盛な猫のようじゃな」

「好奇心は猫をも殺すという言葉をご存じで?」

「死ななかったであろう?」

無表情なアスランだったが内心では今すぐ斬りつけたかった。


「姉上…」

「王妃陛下はそこまで理不尽な方ではない」

「散々いがみ合っておいででしたが?」


王宮内で二人は対立関係にある。
第二王子を溺愛する王妃陛下に、第一王子の教育係を任されているユズリハ。

二人は跡継ぎ争いでいがみ合っていると言われているが、ユズリハは王妃陛下に対抗意識を持っているわけではないのだから。


「私は王妃陛下に嫌われているだけ」

「では、これ以上嫌われないようになさればよいではありませんか」

「私のプライドがある」

「はぁー…」


女同士の諍いは万物共通で面倒だと思った。
例外も傍にいるのだが。


「王妃陛下は不義を働かない者に理不尽な行いをすることなさらん」

「ルクシア様はどうなのです」

「こればかりは解らぬ。どうしても解せぬのじゃ」


王妃としての役目は十分すぎる程果たし、かといって国王を立てている。
妻として傍若無人な行動をしているわけではないのだが、第一王子であるルクシアに対して厳しく冷たすぎるのだ。


「傍にいて抱きしめるだけが愛ではない」

「冷たい目を向け頭を撫でることもしないでですか」

「アスランはルクシア様に近すぎる。客観的に考えよ」

「母親代わりの姉上に言われたくありません」

双方ともにルクシアを大切に思うあまりに客観的に見れていない部分がある。


そして二人も家族の縁が薄い故だった。


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