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第一章

41行方不明なグレーテル

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仕事を終えた後に翡翠宮に戻って来た二人。

「グレーテル?」


かまどの方に顔を出してもグレーテルの姿はなかったことにルクシアが首をかしげる。


「アスラン、グレーテルはトイレか?腹を壊したのか」

「ルクシア様、王子としてその言い方はなりません。姉が聞いたらお尻ぺんぺんです」

「嫌だ!」


基本穏やかな表情をしているユズリハだが、マナーにも煩く時には体罰に近しい真似をしているのだ。


「アスラン様!大変です」


「コロネ、グレーテルが見つかったか?」

「一応見つかりましたが」

「ん?」

どうしてそんなに焦っているのかと思ったアスランは聞いてみた。


「それが月虹宮に…」

「何だと!」

王宮のすぐ近くにある離宮で、数多の離宮の中でも一番大きい。


「王妃陛下の宮に?」

「はい、目撃情報がありまして」


「どっ…どうしよう!」

涙目になるルクシア。
使用人にも容赦がなく、氷の女帝とも呼ばれている。

通常一国の王ならば側妻を持つのが当たり前なのだが、現在も王妃以外の妻を持たないこの国。

その一番の理由が王妃に遠慮をしているとか、恐妻が怖いからではないのか?とか様々な噂があるのだ。


「落ち着いてください」

「でも、母上は使用人に容赦がない」

「先日も侍女を不当解雇したという噂ですか」

「うん…」


ルクシアとて母を愛してないわけではない。
だが、使用人に厳し過ぎる傾向があるので、まだ侍女となって日の浅いグレーテルが万一、粗相をしてしまったらどんな仕打ちを受けるか考えただけでも恐ろしい。


「とにかくグレーテルを」

「大丈夫かな?グレーテル酷い事されちゃうの?ユズリハみたいに強くないし」

「姉は人間ではありませんからな」


本人がいない場で言いたい放題だ。
確かに魔物顔負けに強いユズリハであるがあんまりな言いぐさである。


「お二人共、好き放題ですな」


「とにかく…」


急いでグレーテルを助けないとと思っている最中、近くで魚を焼く煙が立ち込めた。


「誰だ、こんな時に魚を焼く馬鹿は」

「ゲホッ!」


二人はこの非常時に魚を焼く馬鹿は誰だと思いイラついたが。


「んー、いい感じに焼けたわ」

「これは美味そうですな」


噂をすればなんとやら。
心配していたその人物が何故か庭師と一緒に魚を焼いていた。


「「「何でいる!」」」


三人はさっきまでの心配を返せと心から思った。


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