君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

文字の大きさ
上 下
50 / 156
第一章

39再会

しおりを挟む




侍女の仕事は楽だった。
他の侍女に言えば怒られるだろうが、下働きをしていたグレーテルにとっては楽すぎるのだ。

早朝に起きても仕事おはある程度片付いたし。
侍女に迎えられてからは厨房の手伝いをしようものなら。


「頼むから止めてくれ」

「旦那に殺されちまうよ」


等と言われ土下座までされてしまった。
間にコロネが入ったがこれまでのように肉体労働はさせてもらえない。


「せめて水汲みと薪ぐらい」

「そもそも、男の仕事だ!」

知らないうちにあの侍女二人に過重労働を強いられていたのだ。


「つまんない」


こうして一人の時間を持て余していたのだ。

翡翠宮を出て庭園をぶらぶらしていると、珍しい薬草を見つけた。


「まぁ、沢山」

薬草につられて知らない道に入ると小さな離宮。
翡翠宮よりも大きいが正方形の古いが気品のある宮にたどり着く。


「わぁー素敵な宮」


王宮とは異なったつくりをしているがとてもシックな作りで目を奪われる。


「誰じゃ!」


そんな時だった誰かに咎められた。


「申し訳ありません!私…」


「そなた…」


凛とした声にびくつくも声を聞くと。


「あの時の親切な奥様…」

「何故そなたが」


顔を隠している女性はあの日、馬車にも置いて行かれたグレーテルを邸まで送ってくれた貴婦人だった。



「どうしてこちらに?」

「それは妾の台詞じゃ…いや、良い」

「はい?」

「入れ」


いきなりの事で理解できなかった。


「聞こえぬか?そなたは耳も悪いのか」

「いえ…」


「妾が入れとお申しているのだ。早く入らぬか!」


「はい!失礼します!」


咄嗟に返事をしてしまったグレーテルは何だか逆らえなかった。


(鬼姫様のようで逆らえなかった)


前世仕えた主、鬼姫。
顔は美しいが鬼のように恐ろしいと呼ばれた女主人。

声一つで周りを恐れさせ怯えさせたという女傑だった。
グレーテルは別の意味で恐れではなく畏れを抱いた人物でもあった。




「ふわぁー…なんて素敵なのかしら」

「その口を閉じぬか。馬鹿かそなた」

「はい」

「返事をするでないわ」


馬鹿と言われても良い。
この宮にはグレーテルが大好きな物であふれている。


「なんて素敵なのかしら。美術館でもお目にかかれない貴重な品ばかり」

「ほぉ?頭は悪いが目は悪くないか」

「目は良い方です」

「そなた、やはり脳みそが腐っておるのぉ」

さりげなく酷い事を言われているのにも気づかない。
それ程に興奮しているのだろう。


「お茶を」

「はい、かしこまりました」

いつの間にか現れた侍女らしき年配の女性がお茶の用意をするべくその場を後にした。



しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

妹を叩いた?事実ですがなにか?

基本二度寝
恋愛
王太子エリシオンにはクアンナという婚約者がいた。 冷たい瞳をした婚約者には愛らしい妹マゼンダがいる。 婚約者に向けるべき愛情をマゼンダに向けていた。 そんな愛らしいマゼンダが、物陰でひっそり泣いていた。 頬を押えて。 誰が!一体何が!? 口を閉ざしつづけたマゼンダが、打った相手をようやく口にして、エリシオンの怒りが頂点に達した。 あの女…! ※えろなし ※恋愛カテゴリーなのに恋愛させてないなと思って追加21/08/09

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

処理中です...