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第一章
33追いかけっこ
しおりを挟む雪結晶の中、畑に向か雪で埋もれた野菜を掘り起こす。
「キャベツ‥」
「こっちはネギだ」
「見事です」
早朝から夫婦そろって寒いなら野菜を取りに向かい、豊作な出来栄えを確認する。
アスランの右手には。
「ギャア!ギャア!」
「旦那様、そちらは」
「ああ、今朝一番に見つけた魔鶏だ。またの名を地鶏」
「地鶏…」
よく見るとグレーテルが良く知る鶏を連想させる。
「焼きましょうか、お刺身?それとのお鍋…」
「どれも捨てがたいな」
真冬の季節に若い男女が人目を忍んで色気のない会話を繰り返す。
そこに見守っている影。
「なんて色気のない」
「我が弟ながら情けない」
「アスラン…アウトだ」
地面に穴が三つ、そこから棒が突き上げれていた。
「しかしユズリハ様、いつまでこうしていれば良いのでしょう」
「ユズリハ、少し苦しい」
「コロネ、今生がないぞ。ルクシア様、男は時に耐えなくてなりませんぞ」
弟とその恋人を盗み見して偉そうに言えることではなかった。
「あれ?穴が暗くなった…息ができない!」
「何ですって…ぐっ!」
二人は急に苦しみだした。
その理由は地上から送られるはずの空気が遮断されたからだった。
「何をしておられる」
「アスラン…」
穴を鬼の形相に睨むアスランの姿があった。
「姉上!またですか!殿下とコロネも一緒に」
「アスラン、これは野外事業だって言われたんだ!」
「コロネは護衛です!」
責められた二人は速攻で言い訳をするも、ここではいそうですかという程アスランは甘くなかった。
ただ一人グレーテルを除いては。
「皆さま、そこで何を」
「グレーテル、近づくな。ルクシア様はお勉強を追加にしばらくピーマンですぞ」
「嫌だ!ピーマンは人間が食べるものじゃない」
「なりません!好き嫌いをしては大人になれません」
アスランは何所から取り出したのか紐で吊るされたピーマンを取り出した。
「何だそれは!」
「ピーマンに糸を通しました。これで常にピーマン食べ放題ですぞ」
「そんなの要らない!」
目の前では恐ろしい光景が広がっている。
ピーマンを振り回し追いかける男に、その男から必死で逃げる子供の図だ。
「これは虐待にならないのかしら」
不敬罪にならないのが不思議なぐらいだった。
「殿下は食わず嫌いの傾向もあるからな」
「そうなんですか?」
「ああ…だからと言って逆効果だろう」
確かに無理に食べさそうとしても食べないだろう。
「そこでお前の出番だ。頼めるか?」
「かしこまりました」
何時までも追いかけっこをする二人を無視しコロネに頼まれごとをしたグレーテルはひとまず先に翡翠宮に戻ることになったのだった。
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