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第一章

28厄介者

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レストランを追い出されたので他の店に入るも対応は同じだった。


「当店はドレスコードのないお客様はお断りしております」

「今度来られるときは身なりを整えてください」

「貴様!」


当然であるが王都内の名店は格式が高い。
しかも貴族御用達であればマナーは重視され、服装も同様だ。

以前のカーサは身なりもきっちりしていたが、今はそうではない。
平民にしては良い服装であるが、高級店に入るには不釣り合いだったのは清潔感が感じられなかった。


「またのお越しはご遠慮します」


「二度と来るか!」


通常ならまたのお越しをというのだが、店員達は皆、二度と来店して欲しくないと思ったのだ。



「まったくなんて失礼な店だ!」


怒りながら町を歩くカーサだが胃袋は満たされていない。
他の店に入ろうにも限界だったので市場で我慢しようとしたのだが。



空から雫が落ちてくる。

「雨だと!」

朝から天候が怪しいと言われていたが無視をしていた
急いで雨宿りをしようとしたが、既に喫茶は満員で入ることはできない。

市場も店じまいを始めている。


「くそっ!」

雨宿りをしようと木のある場所に向かうも。

「おいそこの旦那、今日は台風の予報が出ているんだぞ!」

「台風だと?寝言は寝ていえ…クソ爺」


いきなり話しかけて来た老人は親切で雨宿りの場所を提供しようとしたがカーサははねのけた。


「身の程を弁えろ。汚らわしい」

「なっ…親切で旦那様が!」

「良い、いきなり声をかけた私が悪い」

老人は怒ることはせずにそのまま去って行く。


「馬鹿な老人が、この程度の雨で台風になるはずがない」

カーサは大木に向かったが、その直後雨が酷くなる。

「なっ!」

小雨だった雨が一瞬で大雨に変わり数分で土砂降り状態になった。
雨だけでなく風も酷くなり一時間もしないうちに台風になり雷が近くで落ちる。


「落ちないよな?」


先ほどの老人の言葉を思い出す。

「今何時だ」

時間も解らないので持ってきた懐中時計を懐から取り出した時だ。


「えっ?」


雷が直撃した。


「わぁぁぁ!」

大木の元に雷が落ちたのだ。


「何だ!」

カーサは雷が近くに落ちているにもかかわらず金属性の品を取り出してしまったのだ。


「クソ!馬車は…」


台風で吹き飛ばされそうになるが、急いで馬車の元に向かった。


「何でいないんだ!」


時間を指定していたので御者はその場にいなかった。

「あの出来損ないが!」


結局カーサは走って邸に戻ったのだが、あらかじめ予約した時間に来なかったことに追加料金を請求されるもカーサが支払わけもなく解雇したのだが、それ以降、辻馬車でもカーサは問題のある客と認定されたのだった。


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