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第一章
27孤立
しおりを挟む辻馬車よりも酷い馬車は乗り心地が最悪だった。
整備された道でも振動は酷く、馬車内の特有の匂いに顔を顰める。
「この匂いはなんとかならないのか」
「窓は開けないでください。今日は風が強い…」
「うわぁ!」
御者の忠告も聞かずに窓を開けると小さな窓に砂が入る。
「ですから申し上げましたのに」
「砂埃が…ゲホゲホ!」
急いで窓を閉めながらイライラが収まらなかったカーサだが今朝から何も食べていないことに気づく。
「腹が減ったな…」
ここ最近はまともな食事をしていない。
「グレーテルがいた時はまだ飯が美味かったのに」
クロレンス家からの援助の中には上質な鶏肉にワイン等も送られていた。
当初はメイドが食事を用意していたが、そのうちカーサの母の命令で食事の準備をするように命じられていた。
「グレーテルがいればこんな思いをしなかったのに」
自分で招いたというのに、今の生活の苦しさはすべてグレーテルが悪い、グレーテルの所為だと思い込んでいた。
(あの時、俺の言うことを聞けばよかったんだ…何故だ!)
口癖のように君は優しいからと言いながら言いなりにさせていたのに何故反抗的な態度を取ったのか。
妻をちゃんと育てて来たのにと思いながら、馬車が止まる。
「二時間後に迎えに来い」
「本日は天候が…」
「問題ない」
「承知しました」
御者に二時間後に迎えに来るように命じた後に街中のレストランに向かった。
王都内では数多の飲食店がある。
その中でも有名な店がエマニールという店だった。
幼少期から贔屓にしているが、社交界の騒ぎでしばらく通えなくなったが久しぶりにこの店で食事ができると思ったのだが…
「当店はご予約のないお客様はご遠慮いただいております」
「何を言っている!今までは…」
「はい、グレーテル様は事前にご予約をしてくださっていましたし。この店の会員様ですので席を別にご用意させていただいておりますました」
「だったら…」
「ですが二週間前にオーナーが変わりましてこれまでの特権は廃止することとなりました。どんな方もご予約のない方、女性はドレスコード限定です。男性は相応の身分の方のみになります」
「そんな馬鹿な話があるか!」
「馬鹿なのはそちらでしょう?予約もなしに…何所まで馬鹿なのです」
「なんだと!貴様ぁ!」
ウェイターに過ぎない男に侮辱されて逆キレするも、抑え込まれ店から追い出されてしまうのだった。
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