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第一章
25変わり果てた現在
しおりを挟むこんなはずじゃなかった。
今の生活は悪夢のようだと思った。
すべてが狂いだしたのはあの日からだった。
フリーシアと愛し合っているのをグレーテルに見せつけ、両親も抱き込み、グレーテルを第二夫人にしてつなぎ留めればこれまで通りの生活ができる。
面倒なことはグレーテルがしてくれる。
そうなればカーサは愛する人との夢のような生活ができると思っていた。
クロレンス家は商人との渡りがあり、侯爵家との関係も懇意だった。
グレーテルの名前を出せば多くの商人は頭を下げる。
領地代行の才能に倹約かだったグレーテルは贅沢という言葉を知らない。
だから無駄にお金を使わなくて済むし、従順だった。
(何故だ…どうしてグレーテルはあんな反抗的な行為を)
第二夫人でも妻にしてやるのだから喜ぶと思った。
カーサは自分に対して異様な自信があった。
婚約を結んだ時からグレーテルは自分の我儘はある程度聞いてくれたので勘違いをしている。
(愛しているなら受け入れるべきだろ!)
グレーテルは優しいから何でも言うことを聞いてくれる。
優しいから少しの我儘は許してくれる。
優しいからと決めつけて尊厳を奪い続けていた。
そして扱いは婚約者というよりもメイド以下だった。
自分の望みを優先し、婚約者の誕生日、母親の命日に墓参りにもいかない。
酷い時は約束をすっぽかし、フリーシアを優先するあまり社交界でどれだけ酷い仕打ちをしていたか理解していない。
それでもグレーテルはじっと耐えていたのだ。
妻にしてやるのだから尽くして当たり前で、母に言われた通り妻を育ててやっているのだと思い込んでいたのだが、その驕りがあだとなったのだ。
「カーサ、あの狂暴娘をなんとかしなさい」
「ハズレじゃないか。我が家の大事な美術品を壊すとなんて!」
フリーシアが暴れて高価な品がが壊され、その怒りをカーサにぶつけた。
「金がかかるだけの価値がないじゃないか」
「これから従順で金のなる木だったグレーテル方が利用価値があるわ」
「父上…母上」
隣の部屋にフリーシアがいるのに二人は構うことなく暴言を吐き続けた。
「なんとか伯爵家に金を出させろ」
「そうよ。損害賠償金を支払わせるのよ!」
両家共に金の亡者だった。
しかし、男爵家に賠償金が支払われるはずもなく。
しかもフリーシアの癇癪は鎮まることはなく更に暴走は悪化をするのだった。
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