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第一章
24暴走
しおりを挟む女性と男性では噂を流された時のダメージが違う。
今でも男尊女卑の世では男性が浮気をしてもさして大きな醜聞にならないが女性が浮気をした場合は二度とお日様の下で生きていけない。
それ程差別が大きいのだ。
夫婦間で何かあれば妻に責任がある。
夫の行動は妻で決まる。
結婚前の婚約時も同様だったのだが、カーサはどれだけグレーテルが社交界の噂に苦しめられていたか知らない。
所詮は噂だと放置しただけでなくフォリーもしなかった。
今回もそこまで重要視をしていない。
噂なんてそのうち消えるのだから無視をするのが一番だと思っていた。
フリーシアが何度も助けてと。
傍にいてと懇願しても同じ返答だった。
「大丈夫だ」
「気にするな」
「無視しろ」
こんな返答ばかりで耐え切れなくなったフリーシアは思った。
(私を助けようともしないで!)
以前のように常に傍にいてくれなくなった。
邸にいる時間は夜だけで昼間は出て行って中々帰って来てくれない。
贈り物もほとんどなくなり貧相な服を着せられ使用人にも冷たい目で見られ、義両親に嫌味を言われても助けてくれない現実に限界だった。
「カーサ!もう限界よ」
「は?」
「どうして私をちゃんと見てくれないの?ちゃんと愛してくれないの!守ってくれないなんて酷いわ」
「ちょっ…」
癇癪を起すフリーシアは怒鳴り散らし傍に置いているティーカップを投げる。
その行動に驚くもフリーシアの行動は止まらない。
「何事なの!」
「おい!何をしている!」
フリーシアの暴走は止まらず、手が付けられない。
「止めるんだフリーシア!」
「私はこんな惨めになる為に婚約したんじゃないわ!こんな惨めな暮らしをするなんて…私と結婚したいがために騙したのね!」
「何を言っているんだ」
「私がどんな酷い目にあっても守ろうともしない。最低よ!」
暴言を吐きながらテーブルに置かれている皿を投げて割るの繰り返し。
それだけでは終わらず傍にある小さいな棚の取っ手を押した。
その所為で中に入っていた上等なワインは悲惨な状態になり、その隣に飾っているウィスキーはドミノのように倒れていく。
「ああ!私の大事なコレクションが!」
「私の大切なワイングラスが!」
この品は先代から引き継いだ品だったが、フリーシアは完全に我を失い美術品を壊し続けた。
その中には借り物も含まれていたのに気づくことはなかった。
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