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第一章
22亀裂
しおりを挟むカーサにとっては噂など気にするなというが、フリーシアにとっては死活問題だった。
その理由は――。
「フリーシア、貴女なんてことを」
「我がエレフスタ家に泥をるとは!」
フリーシアの実家、エレフェスタ伯爵家では社交界の噂により大打撃を受けていた。
「取引先の貴族とは手は切られてしまったわ」
「それだけじゃない。先日の王宮にて犯罪者の親呼ばわりだ。お前はなんてことを」
伯爵家ではるが、高位貴族とは程遠く領地持ちではあるが金銭的のも余裕があるわけではない。
数年前に共同事業が成功して今はそれなりに良い生活ができていたが、その共同事業をしている友人から今回の噂を聞き、仲が悪くなった。
共同事業の件も壊れてしまい、当初は反論したが。
犯罪者の親とは一緒にいたくないと言われれば何も言えない。
「以前からお前は好き勝手していたが、所詮は平民や下級貴族の娘が相手だから問題なかった。しかし私は聞いていなかった」
「フェリス侯爵夫人が寵愛する侍女だなんて…しかも王都から追い出し殺したなんて!」
「違います誤解です!私は彼女に第二夫人になって今後も私の為に生きて欲しいと」
「そんなことを言ったのか!」
「だってカーサの両親も当然だと…だから愛し合っている所を見せて解ってもらおうと思ったんです。優しい彼女なら喜んでくれると…」
「馬鹿か!」
「きゃあ!」
耐え切れなくなったエレフェスタ伯爵はフリーシアを殴った。
平手だったのは最後の優しさなのかもしれない。
「何をなさるのです!」
「お前の教育の悪さだ!こんな馬鹿な考え方をするとは」
「私の所為だと言うの?第一フリーシアの我儘で傍若無人は手が付けられなかったのよ…貴方だってこの子から逃げていたじゃない」
「そもそもこんな馬鹿に育ったのは!」
「こんなことならもっと早く養女に出すべきだったわ」
「えっ…」
フリーシアは母に縋ろうとするも、拒絶させ恐ろしい言葉を耳にした。
(養女?どういうこと…)
自分は愛されている。
そう信じて疑わなかったのだ。
物心ついたころから欲しいものは与えられていた。
お忙しい両親であるが欲しい物はすべて与えられてきた。
だが見方によれば、本当の意味で愛しているわけではない。
欲しい物だけを与えて終わりといものだ。
物欲を満たさせれば愛しているということではない。
二人は本当の意味でフリーシアを愛していなかったのだから。
その事実を受け入れるなんてできない。
欲深いフリーシアは与えられて当然だと思っていたのだから。
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