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第一章
21中傷
しおりを挟むグレーテルの訃報が社交界に流れ、カーサの立場は落ちる所まで落ちた。
婚約者を国外に追放し、その親から使用人までも追放して財産を没収させたことは鬼畜外道と言われても仕方なかった。
そんな男に誰も近づくわけもなく。
同時にその恋人で現婚約者となったフリーシアも同罪だった。
むしろカーサ以上に叩かれていた。
社交界ではフリーシアを蔑んだ目で見るのは当然。
嫌がらせにジュースをかけられたり、足を引っかけるの当たり前だったが。
目に見える悪意はまだマシな方だった。
怖いのはお茶会などでフリーシアの品の無さを吹聴されていることだ。
他にも男がいて、遊び歩いていること。
婚約者のいる男に手を出す悪女と噂を流し、既に他の男との間に子供がいるとか、クロレンス家の財産を根こそぎ奪うべくグレーテルを殺すように指示したのだとまで言われていた。
「こんな…こんな酷い目にあわされて…どうして守ってくれないの」
「人の口に戸はたてられないんだ。解っているだろ」
「何を言っているの…」
日に日にああエスカレートする噂。
すべてが偽りではないが、婚約者のいる男性を奪った事実。
自分の欲望を叶えるためにグレーテルの尊厳を奪う続け、搾取し続けた事実は変わらない。
挙句の果てに大事な日にわざと浮気現場を目撃させ家族そろって浮気を承認し、日陰の存在となり永遠に奴隷として生きろと言ったようなものだ。
あの浮気現場を目撃していた使用人は口をそろえて告げた。
「伯爵家がけしかけたのでは」
「家族そろってグレーテル様に虐めのような真似を」
「死ねと言われた方が慈悲があります」
その使用人は嫌気がさしてその日のうちに辞表を出したのだが、そこで終わらないのが社交界の恐ろしさだ。
ある程度実績のある使用人が理由なく邸を辞める場合、再び貴族の邸に働く前に推薦状を書いてもらう為に調査が行われる。
前職を辞めた理由を聞いた後に事実確認をするのだ。
彼女達は少しの罪悪感あったのか、事実を話したのだ。
職業紹介所や商業ギルドは死守義務があるので外に漏らすことはない。
噂の出所がは解らないが、フリーシアに悪意を抱く者は多かった。
そんなことも気づかないカーサは。
「噂なんて気にするな」
「カーサ?」
噂を抑え込む努力もせずに。
「無視すればいいだろ?」
「何を言っているの…」
醜聞で傷つくフリーシアに更に追い打ちをかける言葉を告げたのだった。
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