君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

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第一章

18宮付き侍女

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数多の侍女の中では階級が存在する。
その中でも宮付き侍女はいくつかある宮に住まうことが許される。

国王が執務に使う宮殿が中央となり名を竜王宮。
主に執務を行い周りを囲む翡翠宮、水晶宮に数多の宮が存在する。

王家や王家に近しい者や、その中でも国王のお気に入りの妃に侍女が住まうことが許されるのだ。


「この翡翠宮は俺が賜った宮だ」

「はい?」

(どういう待遇だ)


いかに小さな宮といえど、立派な離宮だ。
離宮にしては広すぎるのだけど、侍女がいないのも驚きだ。

「翡翠宮は他の宮よりも少し小さく庶民的だが」

「いいえ、高位貴族より良い邸かと」

感覚がおかしい。
確かに煌びやかさはないけれど、美術品は国宝級の物だ。

調度品もアンティークでセンスの良さが解る。


「すべて国王陛下からのいただいた物だ」

「この愚弟は過ぎたる品です」

「はっ…はは」

「今日からお前は宮付きだ。異論は認めない」

既に拒否権などなかった。

「この宮の女房になるんだ」

「へっ…」

手を握り唇を寄せられ真っ赤になるグレーテル。

「あの堅物が…姉はようやく安心できる」


あまりの展開の速さについていけなかった。


グレーテルが知らない所で色々動いていたのだがグレーテル本人は知る由もない。



「くっ…豪華すぎる」

「慣れてくれ」


翡翠宮を案内された後に自室を案内されてしまった。


「俺と同じ部屋でもいいんだが」

「いいえ、ぜひ一人部屋でお願いします」


不敵に微笑むアスランに後ずさる。


「おいおい、そんな嫌がるな」

「アスラン様…」

「アスランだ。様をつけるな」

「えーっと…」


呼び捨てにしろと命じられるも、すぐになんて無理なのだが…


「そうか、できないならできるようにするか?」

「ひぃ!」

壁に手を置かれて襲われる寸前だった。


「まっ…待ってください」

「今すぐ夫婦になってもいいんだが」

「アスラン!」

「…チッ」


距離が近づく寸前に名前を呼びとりあえず貞操は守られたが、身の危険を感じた。


「あんなに生真面目だったのに」

「前世で少し後悔をしていた」

「はい?」

「もっと自分に正直になれなかったことを…お前と死に別れして、転生してから」


そっとグレーテルの髪に触れてキスをしながら眉を下げる。

愛しいものに触れる手つきはまるで腫物に触れるようだった。


「主への忠誠心を優先するばかりでお前を後回しにした」

「それは…仕方ない事で」

「後悔だけは今も残っている。だからお前を愛したい。前世よりも」


後悔は決して消えなかったアスランは神が与えてくれた幸福を感謝した。


「愛している」

「はい」


恥ずかしさはあれど、満たされた心に幸福を感じるグレーテルだった。


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