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第一章

17姉

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綺麗な綿の生地。
部屋は日当たりが良く、庭園が良く見える景色に特別待遇の部屋だと解る。


「まぁ、よく似合うな」

先ほどから着せ替え人形のように上等な服装に着替えさせられ、傷は治療され傷跡もない。

だけど別の意味で精神がすり減っていた。

「こんな可愛らしいお嬢さんがいたなんて、何故早く言ぬのだ」

「いえ…姉上」


目の前でテンションを上げる女性。
アスランの姉ユズリハは堅物の弟に浮いた話一つない事を心配していたので大喜びしていた。


「本当に良かった。弟が男色家だと噂が流れて心配していた」

「は?」

「まぁ、主に忠実な臣下はそういう噂は流れやすいが…お前の場合は本当に女性に興味がなさすぎる。気を使って寝所に侍女を侍らせたのに」

「そんなことをしたんですか」

「姉の気持ちを考えよ」


「大きなお世話です!私は貞操観念がない女は好きません」

「理想が高すぎるのじゃ。伯爵以上の貴族なら許されるが元平民の立場で聡明で控えめな女性が欲しいなど…まぁ、すでに心に決めた恋人がいたのなら言えばいいものを」


このテンションの高さは前世で小姑だった義姉を連想させる。


「堅物で融通が利かなくてどうしようもない馬鹿ですが」

「はっ…はぁ」

「どうかよろしくお願いします。浮気はできない甲斐性無しですが」


ぎゅっと手を握られる。


「あの…私の服は」

「破れているので処分します」

「えっ…ですが、まだ着れますし」

「血で汚れてますし。あんな粗末な服を誰が渡したのです。メイドといえどありえません」

「え?」


侍女ほどではないにしても裏地もない服。
薄すぎる布でできたメイド服は当初、かまど番になった時に渡されたのだ。

「給料に関しても論外だな」

「調べましたが、侍女達の仕業ですな」

「王妃付きの侍女か」

一瞬二人の表情が鬼の形相になるドン引きする。


「ほぉ?侍女が…」

「甘い顔をしていれば調子に乗るとは」

あまり似ていないと思ったが二人の表情は似通っている。


(義姉上と同じ顔に!)

前世では小姑となった義姉を思い出す。
普段は冷静沈着で怒ることは滅多にないのだけど泣く子も黙る鬼侍女と呼ばれていたほどだ。


女性ながら武闘に優れ男顔負け。
睨むだけで相手を恐怖に陥れるだけのことはできるのだ。


「私は大丈夫ですので服を」

「服は新しく新調させる。そなたは今日から宮付き侍女じゃ」

「えっ…」

恐ろしい程の出世に唖然とするグレーテルは状況を飲み込めなかった。



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