君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

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第一章

7悪意

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王宮内の噂は聞きたい聞きたくない関係なく聞こえてくる。
特に他人の不幸は蜜の味と言うように侍女達は仕事の合間に談話室で好き放題話すのだ。

厨房に引きこもり、後はかまど番を任されているグレーテルは聞く気はないのに聞かされてしまって迷惑だった。


(できれば聞きたくないわ)


まだ年若い第一王子は幼少期に病にかかり片目となった。
第一王位継承者が片目を失ったなど外聞が悪く一部の侍女、貴族出身の侍女や由緒正しき騎士の家柄は認める気はないようだ。


「ねぇ、ルクシア様の目を見た」

「ええ、あの醜い目」

お茶を飲みながら話す侍女達は自分達が将来使えるであろう主を好き勝手に話す。

「今日、包帯を変えるように言われたんだけど…気持ち悪いったらないわ」

「病が移ったら嫌だからメイドに押し付けたのよ。そしたらその後気分が悪くなって気絶したんですって」

「本当に嫌よね。呪われた王子なんて」


まだ若く最近入ったばかりの侍女の二人は主に使えるという意味をちゃんと理解していなかった。


見た目が醜く体の弱い王子など不要だ。
すぐにでも廃嫡にすべきだと考えていたのだ。


「かまど番、お前もそうおもうでしょう?」

せっせっと給仕係に徹底するグレーテルに会話を振り始める。


「こんなの声をかけてどうするのよ」

「いいじゃない?お前もそう思うでしょう」

パンを食べながら、ニヤニヤと笑うのだが。


グレーテルはこのくだらないおしゃべりに関わりたくないし関わる気はまったくない。


「私はお目見えできる身分ではございません」

「だからそういうんじゃなくて」

「下賤な者ゆえです…ですが、片目が見えないというのはそんなにいけませんか?」

「「は?」」」

グレーテルはただの世間話であることは解っていた。
こんなくだらない茶番劇に耳を貸す気はなかったのだがあまりにも馬鹿すぎる二人に言いたくなった。


「戦場で片目を失くす騎士はこの王宮にいらっしゃいます。ですが、今も騎士として活躍される方いらっしゃいますし、騎士に限ったことではありません」

「何言ってんの」

「何より我が国の第一王位継承者は第一王子殿下と言うのは紛れもない事実と聞いております」

「なっ!」

グレーテルの表情は変わらない。
その物怖じしない態度は時として生意気に映るのだ。


だがグレーテルは止まらなかった。


「私は頭が悪く何も解りません。ですがこの国の主となられる方に対してそのようなことを申すのは不敬です」

「このっ!」

「言わせておけば!」


身分至上主義は何所の国でも共通だった。
特に自分は偉いと思っている侍女はグレーテルの態度と言葉が気に入らず手を上げた。


武術の心得のないグレーテルは受けるしかなかったのだった。

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