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第一章
2男爵家の愚行
しおりを挟むグレーテルが行方不明になり、二週間後。
フェリス侯爵家はグレーテルを血眼になって探した。
王都内に限らず国内だけでなく国外にも手を伸ばし、目撃者や情報の提供者に謝礼金を支払う公にしていた。
フェリス侯爵家だけではなく、大商会もグレーテルの安否を確認する為に同じように動いていた。
その一方でフェスト男爵家は一部の貴族を覗いて爪はじきにあっていた。
社交界は勿論の事、フェスト一家は四面楚歌状態だった。
「何だ、この新聞は」
「名誉棄損で訴えましょう」
カーサは新聞を破り床に叩きつける。
母、マーラも同様だった。
グレーテルが行方不明になってすぐに、社交界ではフェスト家は悪人として見られた。
彼らは自分達の非を認めることなく当然のように社交界に足を踏み入れるも、周りの目は冷たく視線で人を殺せるようなものだった。
特に酷いのはフェリス侯爵家の傘下にある貴族だ。
「先日の王宮主催のお茶会も我が家だけ招待されなかったわ」
「それだけではありません。先日のお茶会でフリーが門前払いをされたんです」
伯爵令嬢であるフリーシアは友人のお茶会に招待されなかったが、そのまま参加したが門前払いをされた。
それだけではない。
これまで頻繁に利用していたお気に入りの服飾店でも出入り禁止されてしまった。
お抱えの仕立て屋も暇を貰い、王宮に戻ったのだ。
「フリーが肩身の狭い思いをしています」
「それも全部あの女の所為よ」
マーラは爪を噛みながら、表情を歪める。
こんなことになるとは思いもしなかったのだ。
「大体、私は第二夫人でも妻にしてやると言ったのに」
「やはり、約束を違ったのを起こったのか?あの程度ぐらいで」
婚約を結んだ当初はカーサが婿に入る条件として婚約を了承した。
その裏で、彼らは婿養子になる事を理由に搾取をしていたのだが、罪悪感の欠片もない。
跡継ぎがいないクロレンス家の跡継ぎに大事な息子を差し出すのだから当然だと豪語していた。
婚約中にもマーラは常に言聞かせた。
婿になったとしてもどちらが上か解らせなくてはならない。
常に夫に従順である妻であるように教育をするのが務めだと言い聞かせていたのだ。
カーサはマーラの言葉が正しいと思った。
自分は貴族で、グレーテルは元は平民であり百姓貴族で、名ばかりの貴族なおだから自分が教育しなくてはと思っていた。
悪気は一切なく、むしろ無知な婚約者を導いてやっていると傲慢な考えを持っていた。
そして何より問題なのは婚約者としての接し方だった。
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