君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

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序章

9身勝手な言い分

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一体何時どこでこの男が自分の心を殺したのか。

(私の台詞だわ)


これまで我慢を強いられたのはグレーテルの方だった。
欲望に忠実にわがまま放題に過ごしてきたのはカーサだった。

政略結婚に嫌気がさし、自分だけが被害者のように言うも。
どちらかというと被害者はグレーテルの方だった。


しかも床に落ちているのは。


「そのブローチ、盗んだんですか」

「えっ…ちがっ!」

「父からの贈り物のブローチです。ちゃんと家紋が入ってますでしょう?盗んだんですね」

「借りただけで…」

「許可なく勝手に持ち出したのであれば泥棒と同じです」


どんどん気持ちが覚めていく。
元から冷めていたが既に体の体温は氷のようだ。


「なんてことを言うんだ!少し借りただけだろ!」

「借りる?返す気はあったのかしら?」

「そんな言い方酷いわ。だって…だって」

涙ぐむフリーシアに面倒だと感じる。
これまでなんでも言うことを聞いてくれたグレーテルは許してくれると思ったフリーシア。

困った顔で許してくれる。
そう信じて疑わなかったのだから。


「何事で…」

「おい、何だ…なっ!」


そんな中、騒ぎを聞きつけカーサの両親が現れる。
修羅場を目撃して絶句する。


「カーサ!貴方…」

「母上、申し訳ありません。私はフリーを愛しているんです。ですから…」

「なんてこと」

「まったく思えという奴は…」

この時グレーテルはこうなった以上は婚約解消になるだろうと思った。
過失はカーサ側にあるならこちらは落ち度はない。


そう思っていたのに。

「まったく、するならもう少しうまくしろ」

「そうよ。他の方に見られたらどうするの?グレーテルももう少し上手くしてちょうだい」

「は?」


二人は息子の行為を責めることはない。
むしろこの程度の事で騒ぐなと言われるなんてありえない。


(もう…)


ずっと我慢していた。
カーサも望まない結婚を強いられているのだからと思ったが彼らは最初からグレーテルを嫁として思っていない。


「ごめんなさいグレーテル。でも貴女なら許してくれるでしょ?」

「優しい君なら解ってくれるだろ」


(聞き飽きたわ)


彼らはグレーテルなら許してくれる。
優しから何をしても許してくれると思い込み心から悪いなんて思っていなかった。

(私は…こんな人達と!)


人として感覚がおかしい。
他者を傷つけても自分達の欲求を通そうとすることしか考えていない彼らにこれまで尽くしてきたことを心の底から後悔をした。


もうグレーテルの心は限界だった。


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