君は優しいからと言われ浮気を正当化しておきながら今更復縁なんて認めません

ユウ

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序章

1野次馬

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華やかな場所で溜息なんて良くないと解っていながらもため息が止まらない。
そんな折、招待客がざわめく。


「見て、なんて華やかな」

「本当に美男美女カップルね」

「まるで姫君と騎士物語のよう」


若い貴族令嬢はため息をつく。
美しい金色の髪に青い瞳の令嬢に、その令嬢を完璧にエスコートする令息は絵になる。

二人寄り添いながらも互いに愛しいもの見るような視線。
互いに視線を合わせながらも体をこれでもかというほど密着させ、令息は令嬢の腰に手を当てながらゆっくりと歩く。


恋人というよりも長年連れ添った仲睦まじい夫婦のようだ。


「本当に鴛鴦カップルですこと」

「そうね…なのに」


社交界では二人は運命の相手だと言われている。
愛し合う二人を引き裂いた悪女だとも言われ、居場所はなかった。


…なのだが。


「あら、随分と賑やかですわね皆さま」

「侯爵夫人!」

「ごきげんよう!」


グレーテルを突き刺すような視線の中現れたのは本日の主催者でもあるフェリス侯爵夫人だった。


「どんなお話をなさっていたのかしら」

「えーっと」

「グレーテルは私の大事なお気に入りの侍女ですの。彼女を見ていたのでしょう?」

にっこりと微笑みながらもチクチクとついていく。
令嬢達にとって雲の上の存在である侯爵夫人と言葉を交わすなど無理な話だ。

しかも先ほどまで嫌味のように噂話をして糾弾しようとしていたなんて言えるわけもない。


「グレーテル、貴方の婚約者はまだ到着していないのね」

「あっ…はい」

「困ったものね」

溜息をつくフェリス侯爵夫人にさっきまで噂話をしている令嬢は慌てながら言葉を放つ。

「あの…」

「侯爵夫人、カーサ様なら」


ダンスホールのど真ん中で視線を浴びながらダンスを踊っているというのに何故解らないのかと思ったのだが。


「婚約者を先に会場に行かせるなんて本当に行けない人。でも、すぐにいらっしゃるでしょう?」

「「「え!」」」

目の前で踊っているのにも関わらず、更に告げる。


「婚約者がいながら一人にするなんていけないわ。ええ…他の令嬢をエスコートするなんてことはないわね?」

「奥様…」


「私の侍女がそんな目にあっているなんて…ないわよね?」


笑っているのに目がまるで笑っていない。
ここであそこで別の令嬢とダンスを踊っているなんて言おうものならどんな目に合うか解ったものではない。


「ねぇ?皆さん」

扇を握りながらもミシッと音がした。


「えっ…ええ、勿論ですとも」

「そうですわ」

「私達の見間違いでしたわね」


だらだら冷や汗を流しながらも今すぐにでもこの場から消えたかった。




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