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69復学の後~サリオンside③
しおりを挟む家からは勘当同然の扱いを受けた僕はヴィッセル家に助けを求めたが、門残払いだった。
「お引き取りください」
侍女が僕を邸に入れることはなかった。
他の使用人も何故か僕を見る目は厳しかった。
少し前まではそんな目をしなかったじゃないか。
「奥様は臥せっておられます。そもそもお約束もなくいきなりなんて」
「取り合ってくれなかったのは侯爵様だろう」
「まぁ!旦那様が悪いと…何様のです」
「爵位もたない伯爵の子息風情が」
「なっ!」
使用人の分際でなんて口の利き方だ!
「ああ、もう平民でしたね?」
「何を…」
「家からも勘当されたそうですね。平民の分際で貴族である私にそのような態度を」
「僕は貴族だ!」
「独身貴族ってことですか?」
何所までも僕を馬鹿にする発言に苛立つ。
話しがまるで通じない。
「とにかく邸の…」
「入れるわけないでしょ。野蛮な平民風情が!」
「ぐっ!」
今殴られた?
この僕が侯爵家の使用人ごときが。
「これ以上しつこいなら警備隊を呼びますわよ。この疫病神が!」
水をかけられ唖然とする。
どうしてこんな扱いを受けないといけないんだ?
そんなに酷いことをしたか?
結局邸の中に入れてもらうこともできず、邸に戻ることにした。
「貴様は馬鹿か!明後日は学園に戻ると言うのに勝手に抜け出すとは!」
「でも父上!僕はヴィッセル家に…」
「今我が家との関係を知っていて行ったのか!お前は何所まで私の顔に泥を塗れば気が済むんだ!」
胸倉をつかまれ告げられた言葉。
僕はただ話をしにいっただけなのに、どうして父上はこんなに怒るんだ。
「世間では皆笑っているだろう。世間ではお前は侯爵令嬢につきまとうストーカーだ」
「そんな…」
「侯爵家の使用人はお前の所為で大事なお嬢様が傷物にされたと被害者ぶっているだろう!」
どうして僕だけが悪いんだ。
第一、僕はアグネスを傷つけたことは一度もない。
「卒業後はあの女は侯爵家から籍を抜き結婚する。元王子とな!」
「ぐっ…父上苦しい」
胸倉を掴まれる力がこもりうまく息ができなかった。
「もうお前は今日中に学園に送る。顔を見せるな」
「父上…そんな」
「これ以上私の顔に泥を塗るな!」
そのまま突き飛ばされた後、使用人に拘束される。
「お前達!何をする」
「抵抗しないでください。痛い思いをさせたくありません」
「申し訳ありません」
幼少期から僕の世話役をしていた使用人達までも父上の命令に従うだけだった。
こうして僕は無理やり学園に復学したが、これから本当の地獄が待っているとは知らなかった。
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