89 / 96
閑話 学園のその後④
しおりを挟む「馬鹿な連中だ」
学園長室に飾られる歴代の学園長の写真を見ながら新学園長こと、コバルト・チャイフスは告げた。
「貴方は何所までも甘く愚かで優しすぎた」
ここにはいない前任を思うとやるせない気持ちでいっぱいだった。
コバルトはかつてこの学園を卒業した生徒だった。
決して裕福ではなかったが、優秀で特待生でこの学園を卒業した。
前学園長を尊敬していた。
だからこそ今回の一件は許しがたいものだった。
「先生、貴方は優しすぎた。生徒を思うばかりに面倒事を押し付けられ、馬鹿な教師に屈辱的な扱いを受けた」
前学園長は以前から学園内が府内していることを嘆きなんとかしようと試みた。
だが、私欲に走る教師は時代遅れだと言う始末だった。
教師とは聖職者。
子供を教え導く存在訴えたが、賛同してくれる教師はほとんどいなくなった。
以前からリーゼロッテの待遇に胸を痛めるも、もう老いた自分では限界を感じていた。
故に今の時代を生き抜く若者に委ねようと考えた。
そこで選ばれたのがコバルトだった。
彼は学園を卒業した後に他国に留学し、教師として実績を積んだ後に多くの学校を立て直すことにすべてを捧げた。
現在の教育機関では子供を本当の意味で導けないと考えたからだ。
他国で活躍する元教え子に学園の状況を話して力を貸して欲しいと懇願したのだ。
当初は断ろうとしたが、追い込まれている恩師を見て考えを変えた。
既に限界まで踏ん張っていたのだ。
なのにこの期に及んで他の教員は責任を押し付け合うだけで、年老いた学園長を守ろうともしない。
これまでどれだけの恩恵を受けているかも知らずに。
「私は許さない…」
かつて、何もないコバルトを救ってくれたのは心優し恩師だった。
「優しい先生をあんなふうに追い詰めた馬鹿な貴族達。そして役目を放棄した名ばかりの教師そして私の恩人であるシャルロッテ様のご息女をズタズタにした侯爵家」
コバルトは指導者としての役目は果たす気でいるが、それだけだった。
慈悲なんて与えるつもりはない。
多くの罪を犯し、反省の色がないアグネスに慈悲なんて不要だと思っていた。
これからアグネスは自分の罪と向き合わなくてはならない。
孤独な中で多くの悪意を受けても、誰も手助けしてくれないだろう。
コバルトは学園長として最低限のことしかするつもりはない。
そこから腐るか、這い上がるかは本人次第だが手を差し伸べる気はなかったのだから。
2,404
お気に入りに追加
8,019
あなたにおすすめの小説
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる