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閑話 学園のその後③
しおりを挟む学園の改革を急ぐ新学園長に不満を零す保護者は多かった。
だが、生徒達が胡坐をかかなければこんなことにならなかったのではないかと逆に言われてしまい何も言えなかった。
学園内の騒動が原因で学業に集中できないなど理由にならない。
卒業後は社交界で生きていくには噂程度で振り回されてはいけないのだから。
合理的主義な新学園長は冷たく言い放ち、嫌ならば退学してくれてもいいと言い放つ。
それに対してこれまで身分が低いことで冷遇されていた生徒は、嫌がらせがなくなったことで以前よりも学業に集中できたことで成績が上がり、留学の援助を受けられることになった。
完全な実力主義を望む新学園長は、実力さえ示すならば今後は平民もどんどん入学させるべきだと考えた。
貴族絶対主義の時代はもはや時代遅れであることは明白であり、貴族だから優等生、平民だから劣等生という考え方は間違いだというのはステラの存在で明らかになっれていた。
「平民であるステラ・キャンベルは実に優秀だ・君達よりも環境が悪いのに何故だろうね?」
「それは…」
「元より頭の作りが良かったのかね?それとも相当君達は馬鹿なのか?」
「なっ!」
堂々と生徒を馬鹿呼ばわりする教師に激怒しそうになる。
「嫌がらせをしたのは彼女が優秀な故の嫉妬か。そんな真似をするなら地道に努力すればもう少しましな成績になったのであろう?私の故郷ではこの程度の試験もクリアできない馬鹿はおらんよ」
相手は貴族の子息令嬢であっても情け容赦がない。
学園の風紀を乱し校則違反をするならば厳しく接するのだが、その一方で努力を惜しまず頑張る生徒には情をかけていた。
「学園長…大学の援助が受けられるとは…」
「ああ、君は風紀員として三年間勤めて来た。成績も悪くない…ここで進学した方がいいだろう将来は王宮の警備関係の仕事に就きたいのだろう」
「はい…」
「だが、君の学歴のままでは出世に時間がかかる。ならば大学で4年間しっかり学びなさい。あちらの学校を出て武官長になった生徒もいる、宰相閣下もあちらの大学の卒業生だ」
「学園長…」
「奨学金は私の方で手続きした。ご両親への説得は私に任せなさい。道を閉ざすんじゃない…いいね」
「ありがとうございます!」
――このように、頑張っている生徒に関しては寛大だった。
その所為か、下級貴族が大半の学園では実績と学園内での素行が良ければ援助を受けられ、尚且つ新学園長はけっして冷たい指導者ではなく、むしろ本気で学びたい生徒にとって神様のような存在になっていた。
一部の生徒にとっては悪魔だが、そもそも学問とは誰もが平等に学ぶべきものだと初代学園長が訴えたことばでもあったのだが、忘れてしまっている大人が多かっただけだった。
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