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62王妃の粋な計らい①
しおりを挟む学園での最後の挨拶が終わった後に私達は王宮内にある王妃宮に呼ばれた。
通常身内であっても許可がないと入ることが叶わない宮だ。
勿論国王陛下であっても。
「わぁーすごく煌びやかです」
「あまりキョロキョロしないようにね」
「はい!」
初めてなのだから無理はない。
私も正式に入るのは初めてだったので少し緊張する。
国を出る前に、どうしてもお茶会に参加して欲しいとのことだった。
女官長に案内された後に、部屋に通される。
「ようこそ」
「王妃陛下…」
私達をわざわざ出迎えてくださった王妃陛下は侍女達に視線を送る。
「皆様、どうぞこちらへ」
座る位置は決まっているようだ。
そろりとステラを見るとなんとも逞しいわ。
普通なら緊張するのに…
「貴女がステラ・キャンベル嬢か…」
「はい、お目にかかれて光栄です」
「貴女には本当に申し訳ないことをした。せめてもの詫びとして、留学の費用に関しては心配しないでほしい。。この程度でのことで馬鹿息子がしでかしたことは許されることではないが」
今日のお茶会にアルフレッド殿下も参加しているのだと思っていた。
「あの…殿下は」
「勿論反省中だ」
「あの…もし許されるなら」
控えめに告げるステラに王妃陛下はできるだけ優しい声で告げた。
「遠慮はいらない」
「殿下を許してさしあげてくださいませんか」
「何?」
「私は在学中殿下に親切にしていただきました…今さらですが、今回の事は私の優柔不断な行動と常識が欠けたいたことが原因だと指摘を受けました」
ちらりとレオを見る。
恐らく厳しいことを言ったのはレオだろう。
私も遠回しに言ってしまったが…
「君は被害者だ。確かに婚約者のいる息子と噂になったが、あくまで友人の域だ…第一知らなかったのだろう」
「無知は罪だと知りました。それに周りはそんなこと関係ないのだと」
確かにステラの事情なんて誰も知ろうともしない。
勝手に噂を流して邪推するのだから。
「私は殿下に親切にしていただきました。リーゼロッテ様に対する他の生徒会の方々には怒りを覚えましたが、あの方は苦しんでいました」
「まったく我が国の男どもはこんなに良い女性に何をしてくれたのか…本当に馬鹿ばかりだ」
王妃陛下の素が既に出ているわ。
ステラは気にしていないから問題ないのだけど。
「ステラ嬢、息子は反省しなくてはならない…だが君の好意は伝えよう」
「はい」
「隣国に言った後は何も気にすることはない。後に君のご両親も隣国に呼ばれるだろう」
「え?」
ステラのご両親?
「聞けば君のご両親は平民でありながら堅実であり、優秀だ…娘の為の教育にお金を厭わないという素晴らしいお方だ。ご両親の経歴を調べたが…二人共学歴、職歴も見事だ」
「王妃陛下…それは」
「よく考えてみなさい。平民である彼女が何故ここまで優秀か…ご両親の教育のたまものだ」
差別する気はないけど。
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どんなに才能があっても幼少期にしっかりと英才教育を受けているのとそうではない人とは異なるのだ。
「側近に調べたが、父君の技能は素晴らしい。母君もお針子として素晴らしい経歴がある…そこで隣国からご両親に是非と声がかかっていてね」
「そんな…」
ステラは泣きそうになっていた。
一人で留学するのは心細かっただろうに。
でもご両親と一緒ならば安心だろう。
きっと王妃陛下の配慮なのかもしれないけど、良かった。
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