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閑話 後任者の後悔~ケネオスの場合③
しおりを挟む良かれと思ってした行いはすべて裏目に出ていた。
一度受けた不信感は消えず、ケネオスのずさんな警備体制は問題視されるようになった。
生徒同士の諍いというのは常にあるもので、そのすべてに目を配ることは難しいからこそ、常に周りを観察したり、風紀員との連携が必要になる。
何よりリーゼロッテがしてきた仕事は本当に地味で誰にも評価されることがないことが多い。
評価されたいと思うし感謝されたい人間ならば損な仕事だった。
地道な作業と誰にも感謝されない。
自己顕示欲の強い人間からすればやってられないと思うような仕事が多いのだ。
その癖、何か問題があれば責任を追及される。
生徒だけでなく教師からも。
かなり理不尽な話であるが、二年間リーゼロッテはこなしていた。
「クソ!聞いてないぞ!」
引継ぎのノートは置かれていたが、ケネオスは不要だと言って処分した。
役目を放棄した人間の残した物は不要だと、新体制にする為にも引継ぎは無意味だと思ったのだ。
その所為でこれまで協力してくれた学園内の職員からも反感を得てしまった。
「ケネオス様、アグネス・ヴィッセルがまた問題を」
「他の生徒と!」
そして一番の問題は学園の厄介者であるアグネスだった。
退学になってれば楽なのに、未だに在籍している。
一番下のクラスに落とされても傲慢な態度が変わらず、他の生徒とトラブルが絶えないのだ。
「ケネオス様、明日から例の彼が復学しますが…問題が」
「このタイミングであれが戻るのか」
「学園側も問題があるので、ケネオス様が監督係と」
「は?」
耳を疑った。
何故自分が監督をと思ったが。
「前任者が監督係だったので後任者に任せると。彼女の件に関しても」
「冗談じゃない!何故…」
いくら何でも横暴だと思ったが、既に決定事項だった。
逆らうこともできない。
公の場のやり取りでリーゼロッテ口汚く罵倒し、自分の方がうまくやれると言ったのだから。
「…やるしかないか」
「はい」
もはや逃げることは許されない。
なんとか形にしてみせると誓ったが、そう簡単にはいかなかった。
二年間リーゼロッテは誰にも評価されずに苦悩した仕事がどれ程辛いものは身をもって知る羽目になる。
同時に他の生徒達も、リーゼロッテがどれだけ学園の為に尽くしていたかいなくなってから気づくことになるのだった。
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