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61恐ろしき天才
しおりを挟むカリスタ王国のカトレア学園は完全な実力主義。
入試の倍率は世界一と言われ、特に数学に関してはかなり難しい。
ストレートで合格できる生徒は少ない。
なのにだ。
「ありえん!ありえんだろ!」
「レグルス殿下、現実を見てください」
元寮母さん、アエットが虫眼鏡を用意して答案を拡大する。
「私、頑張りました」
「頑張ってできる範囲じゃないだろ」
私もレオに同感だわ。
努力すれば満点を取れるなんてレベルじゃない。
そもそも、在学中に学年位置をキープしたステラはかなり優秀だった。
でも、天才だからじゃない。
何時も図書室で必死に勉強していたのを知っている。
「私は何が何でも出世しなくてはなりませんから!」
「その動力源はすさまじいですねレグルス様」
「憐れむような目で見るんじゃない」
「ここまで優秀なら果ては宰相か外務大臣か」
「世も末だな」
アリエットは少し大げさな気がするけど…
いや、ステラならやりかねないわ。
それにカリスタ王国は女王陛下が治める国で、現在は女性が宰相を務めている。
「母君ならば推薦するのでは?」
「本気でやりそうだな」
ミカエラ様ならば大らかに笑ってステラを推薦しそうだわ。
「うふふ…これでリゼ様と同じクラスで勉強できます」
「同じクラスだと?」
「ええ、あちらの校長先生が配慮してくださったんです。一人では心細いだろうと」
手紙を差し出され、内容を見るとステラへの配慮が長々と書かれている。
平民であり、他国出身のステラの不安をできる限り減らしたいと書かれている。
勿論成績を考慮していると書かれている。
「良い方なのですね」
「はい、ミカエラ様の元家庭教師をされていた方です」
アリエット言葉に耳を疑った。
「そんな方が…」
「まぁ身分を使って問題を起こされないように肩書がしっかりしている方の方が安全ですから」
徹底されているのはそういうことか。
どんなに平等と言っても、差別は何所でも生まれるものだわ。
だからこそ文句を言えない人物が学園のトップにいる必要がある。
「校長先生は母の家庭教師であると同時に現女王陛下の相談役であり、平民だ」
「えっ…」
「言っただろう?我が国では身分はそれほど重要ではない。実績重視だ」
実力主義でも最低限の身分は必要だと思い込んでいた。
「じゃあ…私が優秀な成績を収めて出世すれば宰相にもなれるかもしれないってことですよね!」
「…悪夢だがありえる」
レオ、相当嫌なのね。
過去に嫌な記憶でもあるのだろうかとも思ったけど、私の成績は三位だった。
良かった…
こうして私達は無事に隣国への留学への切符を手に入れたのだった。
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