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54変わり果てた姿
しおりを挟む久しぶりに学園に出向いた私は突き刺さる視線に晒されるのは覚悟をしていた。
でも、意外な人物の出現により空気は変わった。
キャンベルさんに名前を呼ばれて驚きはしたけど。
程くすると蹴り飛ばされたレオの事は心配になったけど大丈夫みたいで安堵した。
「リーゼロッテ様!」
泣きながら私に抱きしめる彼女を拒絶する気もなかった。
思った以上に小さかったし、幼く感じた。
ふと彼女から紙の匂いがして、ずっと勉強を頑張っているのが解った。
私が学園を休んでいる間、誰も守ってくれる人はいない。
生徒会幹部は休学した後に自宅謹慎となったので本当に一人になってしまったのだから。
その間にも彼女は学園内で冷たい視線に晒されながらも首席をキープし続けたと聞く。
どれだけの努力をしたのか。
私に想像できない。
キャンベルさんは他の生徒よりもリスクを背負ってこの学園にいて、レオの条件を満たすために留学のための試験をクリアすべく頑張っていたのだから。
そう思うと、やっぱり彼女はすごいと思う。
私にはこうして手助けしてくれる人がいるのに彼女は一人で踏ん張った。
苦しいのに負けずに頑張った。
そう思うと彼女が今も自分を責め続けているのが耐えられなかった。
なのに周りはキャンベルさんを責めようとする。
私が声を荒げようとしたが…
お兄様がニコニコと笑いながら、敵意をぶつける令嬢を叩き潰した。
公の場で恥を晒し、吊し上げにしたのだ。
おそらくだけど私が提出した映像データーは生徒達にも公開されている。
どんなやり方をしたのか解らないけどお兄様とアンナが率先して行動したということは情け容赦のない方法だと想定する。
「馬鹿な方達ですわ。アルステッドに容赦のの文字ありませんのに」
「アンナ…」
「まぁ、私ならもっと容赦しませんが」
怖いわ。
本当に怖すぎて何も言えない。
せめてキャンベルさんの耳に入らないようにしよう。
だってキャンベルさんの瞳はお兄様を見る目は尊敬と憧れとが見える。
後は恋する乙女的な視線だわ。
きっと学園に行ったときにお兄様はキャンベルさんと接触したのね。
でも、お兄様は基本紳士だわ。
小さい子供や、体の弱い方には無体を働くような真似をしない。
故にキャンベルさんを気にかけたのかもしれない。
事情を聞けば、キャンベルさんに同情をしても敵意を持つことはない。
むしろ好感はあったはずだ。
お兄様も心なしか愛でいるし。
ただレオに対して口汚く罵倒しているけど。
本当に学園内で何があったか気になる所だけど、一先ず落ち着いて欲しいと思った矢先に怒鳴り声に近しい声で名前を呼ばれた。
「リゼ!」
一瞬、キャンベルさんの顔が強張った気がした。
まさか…
「アグネス?」
変わり果てた姿に私は唖然として反応が遅れてしまったのだった。
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