67 / 97
52会いたかった人~ステラside
しおりを挟む朝から学園内が騒々しい。
また何かあるのかと思いながら私は勉強に集中していた。
「邪念を捨てるのよ」
隣国に留学する為には試験がある。
あの性悪王子は私に難題を突き付けて来たのだから。
「あの腹黒貴公子。絶対に負けるもんか」
試験にクリアして私はリーゼロッテ様の傍に行く。
アリーさんはカスメリア出身だと聞いたので色々教えてもらったけど、本当に実力主義で貴族も平民も関係ない。
王族と平民が同じ視線で話すことも許されている。
ただし卒業後、社交界で嫌味を言われることはあるらしいけど。
不安をぶつけたのだけど。
「大丈夫よ。公爵夫人は気さくな方で、平民も貴族も分け隔てがないの…まぁ、身分をどうこう言う馬鹿はいるけど。ああいう連中は口だけよ。貴女なら大丈夫」
アリーさんの言葉は私を元気にしてくれる。
だから頑張ると決めた。
努力して上を目指そう。
「もし私が学園で優秀な成績を収めて地位を得れば、リーゼロッテ様ともお友達になれますか?」
「あら?まだお友達じゃないの?」
「え?」
アリーさんの言葉に首をかしげる。
リーゼロッテ様と私がお友達?
「いくら面倒見が良くても好きじゃなかったら貴女にここまでしてくださるかしら?彼女は貴女を好いているはずよ」
「本当ですか?」
「少なくとも悪い感情は持ってないはずだわ…そんな弱気じゃだめよ」
「はい!」
私は好かれているとまでいかなくとも、嫌われているわけではない。
「彼女は貴女に期待してたはずよ…じゃなきゃこんなリスクを負わないわ」
「私、絶対に留学してみせます!」
まともに言葉を交わすこともなかった。
お礼を言うこともできず、何が好きか、お菓子は何を食べるのか。
どんな本を読むのか。
何も知らないままだったから今度は聞かせてもらえたら嬉しいな。
そんなことを考えていると。
「えっ…何で」
「アリーさん?どうしまし…」
また騒がしくなった廊下を見ると少し前に私に親切にしてくださった騎士様と腹黒貴公子と一緒にいるのは…
「リーゼロッテ様!」
「キャンベルさん?」
私は人目を気にすることなく駆け寄った。
「邪魔!」
「おい!」
私がリーゼロッテ様の傍に行くのを邪魔するあの男を蹴り飛ばした。
自慢じゃないけど、脚力には自信がある。
この学園に入ってからは貴族から逃げるためにも足は鍛えている。
そのおかげであの腹黒貴公子を蹴り飛ばしたけど受け身を取られた。
あのまま壁に頭をぶつけて死んでしまえばよかったのに。
「見事な蹴りだな」
「あっ…すいません」
「いや、謝る必要はない。元気がいいな」
なんて素敵な方なのかしら。
はしたない真似をしてしまった私を咎めることはなく手を差し伸べてくれるなんて。
本当の王子様だわ!
2,495
お気に入りに追加
8,001
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
何も知らない愚かな妻だとでも思っていたのですか?
木山楽斗
恋愛
公爵令息であるラウグスは、妻であるセリネアとは別の女性と関係を持っていた。
彼は、そのことが妻にまったくばれていないと思っていた。それどころか、何も知らない愚かな妻だと嘲笑っていたくらいだ。
しかし、セリネアは夫が浮気をしていた時からそのことに気づいていた。
そして、既にその確固たる証拠を握っていたのである。
突然それを示されたラウグスは、ひどく動揺した。
なんとか言い訳して逃れようとする彼ではあったが、数々の証拠を示されて、その勢いを失うのだった。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
【完結】殿下の本命は誰なのですか?
紫崎 藍華
恋愛
ローランド王子からリリアンを婚約者にすると告げられ婚約破棄されたクレア。
王命により決められた婚約なので勝手に破棄されたことを報告しなければならないのだが、そのときリリアンが倒れてしまった。
予想外の事態に正式な婚約破棄の手続きは後回しにされ、クレアは曖昧な立場のままローランド王子に振り回されることになる。
過去に戻った筈の王
基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。
婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。
しかし、甘い恋人の時間は終わる。
子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。
彼女だったなら、こうはならなかった。
婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。
後悔の日々だった。
【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる