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52会いたかった人~ステラside

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朝から学園内が騒々しい。
また何かあるのかと思いながら私は勉強に集中していた。


「邪念を捨てるのよ」


隣国に留学する為には試験がある。
あの性悪王子は私に難題を突き付けて来たのだから。


「あの腹黒貴公子。絶対に負けるもんか」


試験にクリアして私はリーゼロッテ様の傍に行く。
アリーさんはカスメリア出身だと聞いたので色々教えてもらったけど、本当に実力主義で貴族も平民も関係ない。


王族と平民が同じ視線で話すことも許されている。
ただし卒業後、社交界で嫌味を言われることはあるらしいけど。


不安をぶつけたのだけど。


「大丈夫よ。公爵夫人は気さくな方で、平民も貴族も分け隔てがないの…まぁ、身分をどうこう言う馬鹿はいるけど。ああいう連中は口だけよ。貴女なら大丈夫」


アリーさんの言葉は私を元気にしてくれる。
だから頑張ると決めた。

努力して上を目指そう。


「もし私が学園で優秀な成績を収めて地位を得れば、リーゼロッテ様ともお友達になれますか?」

「あら?まだお友達じゃないの?」

「え?」


アリーさんの言葉に首をかしげる。
リーゼロッテ様と私がお友達?


「いくら面倒見が良くても好きじゃなかったら貴女にここまでしてくださるかしら?彼女は貴女を好いているはずよ」

「本当ですか?」

「少なくとも悪い感情は持ってないはずだわ…そんな弱気じゃだめよ」


「はい!」



私は好かれているとまでいかなくとも、嫌われているわけではない。


「彼女は貴女に期待してたはずよ…じゃなきゃこんなリスクを負わないわ」


「私、絶対に留学してみせます!」



まともに言葉を交わすこともなかった。
お礼を言うこともできず、何が好きか、お菓子は何を食べるのか。

どんな本を読むのか。
何も知らないままだったから今度は聞かせてもらえたら嬉しいな。


そんなことを考えていると。



「えっ…何で」


「アリーさん?どうしまし…」


また騒がしくなった廊下を見ると少し前に私に親切にしてくださった騎士様と腹黒貴公子と一緒にいるのは…


「リーゼロッテ様!」


「キャンベルさん?」


私は人目を気にすることなく駆け寄った。


「邪魔!」

「おい!」


私がリーゼロッテ様の傍に行くのを邪魔するあの男を蹴り飛ばした。
自慢じゃないけど、脚力には自信がある。

この学園に入ってからは貴族から逃げるためにも足は鍛えている。

そのおかげであの腹黒貴公子を蹴り飛ばしたけど受け身を取られた。

あのまま壁に頭をぶつけて死んでしまえばよかったのに。


「見事な蹴りだな」

「あっ…すいません」

「いや、謝る必要はない。元気がいいな」


なんて素敵な方なのかしら。
はしたない真似をしてしまった私を咎めることはなく手を差し伸べてくれるなんて。


本当の王子様だわ!
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