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51準備完了

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多少は強引な方法を使ったけど、学園側はこれで問題ないかもしれない。


…なのだけど。


「俺も行く!」

「お前が行けば外交問題になるだろう!第一嫡男だろうが」

「父上、そんなことを言って、ご自分が行く気なのではないでしょうね!」



ここで問題が発生した。
私の婚約に猛反対したお兄様は、一緒に隣国に行くと言い出した。


騎士団も辞めて、カスメリア王国に行くと言い出したのだ。
理由は解っている。


「隣国に行くのは許そう。だが、レグルス殿下の妻になることは絶対に認めん!」

「どんだけ嫌われているんだ」

「嫌う?ハッ…私が貴方に感情はりませんよ。勘違いも甚だしい。自意識過剰ですね」


言葉もでない。
レオが学園でキャンベルさんに注意をするときに私に対して厳しい発言をしたことをまだ怒っている。


「所詮他人事なんですよ。だから惨いことを言えるんです」


「アルステッドいい加減にせんか」

「父上は甘いんです。あの発言は親ならば許されます。厳しくするのは親の役目です。ですが血が一滴も繋がっていない他人に言われるなんて不愉快です」


「‥‥言っていることは正論だ」


「レオ!しっかりしてください」


目が死んでいる。


どうあってもお兄様はレオを認めないのだろう。
止めることは不可能だわ。


「案ずるな」


「案じます」


私に甘い声で囁くように告げるお兄様にげんなりする。

「既に隣国に行くことはあちらのハゲ…宰相閣下には許可をもらっている」


今、ハゲと言わなかった?
隣国の宰相閣下になんてことを言うのかしら。


「私の腕前を認めてくださっているのでな、近衛騎士団に入る許可をいただいた。万一お前を傷つけた時は剣でブスっと…」


本気だ。
この目は本気だった。


「はぁー…既に話がまとまっているなら致し方ない」

一度言い出したら聞かないお兄様。
でもここまで準備をしていたなんて知らなかった。


「いつの間に連絡を‥‥」

「ああ、ミカエラ様に」


「母上…」


レオの目が死んでいる。
いつの間にミカエラ様とそんな話を。


「それで三日以内に、国を出ることになっている」

「はい…」

「お前の婚約云々は別として、お前の祖父がしばらくは後見人となる」


「お祖父様が…」



よく考えれば隣国には伝手がない。
そうなれば母方の祖父に頼るよりほかないのだから。



「色々ぶっ飛んだ方であるが、悪い方ではない…家族思いの優しい方だ。そう。家族には」


「含みのある言い方ですね」


「家族に手を出した人間は最悪な状態に…」


「私の事は知っておられるのでしょうか」


聞かなければ良かった。
この様子だと知っていると判断する方がいいのかしら?


「知っている可能性が…」

「お祖父様にはちゃんとう報告しておいたぞ。お前が粗末に扱われ不貞行為をしていることも。お前が顔を殴ら得て寝たきりにされたことも…ああ、傷物にされたことも」


「お兄様!」


何でそんな誤解を招くようなことを!
傷物にされたと言えば色々誤解をされるに決まっているのに。



「カスメリア王国の軍勢は恐ろしい。あの馬鹿は国を出たら晒し首だな」


「でしょうね」



そんなに物騒な人なのかと思うと会うのが不安になる。
けれど、着々と私が隣国に行く準備は進められているちいうことは、あの二人とはもう会うことはないということになる。



「学園には一度戻りたいのですが可能ですか」


「それは…」

ちらりとレオを見るお父様。


「できなくはないが、嫌な思いをする」

「ええ」


ケジメとして挨拶しないと。
ヒギンズ侯爵夫人にも挨拶無しというわけにもいかない。

あの方にしてみれば私の所為で余計な仕事を増やされて迷惑に思っているでしょうけど。


でもこのままにしておくのは嫌だった。


「それにこのままでは逃げているだけではありませんか」


「解った…」


ここまで性格が悪いなんて私自身も思わなかった。





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