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40退学宣言~ステラside
しおりを挟む私はこれまで気づかなかった。
ずっと我慢して来たけど、私自身もおかしかったんだ。
貴族の学校に平民の私がいることがおかしいと思い込んできたけど。
洗脳されてしまっていたのかもしれない。
「無様ね?落ちるだけ落ちて…自分より弱い生徒を虐めて憂さ晴らしして」
「私は…」
「言い訳は結構だ」
この声は…
振り返ると後ろには…
「言い訳は見苦しい。既に君達は今日中に退学が決まっている」
あの人だった…
リーゼロッテ様がの暴行を受けた時に、現れた人。
「レグルス殿下…」
「「「なっ!」」」
殿下って…
「この学園では身分は関係ない」
「いいえ、無礼は許されません。それに彼女達は既にこの学園の生徒ではありません」
「ああ、君達は既に最低ランクに落ちている。しかも父君が横領の罪で失脚しているからな」
氷のように冷たい瞳だった。
あの時とは異なっているように思えた。
「ランクを落とし、代表生徒を侮辱した罪は重い。彼女は我が国に留学が決まっている。故に侮辱は許されない」
「え?」
「改めて名乗ろう。私はレグルス・リーズベルトだ。身分を隠していた…この学園の内情と、社交界を担う彼らを知ろうと思ってな…だが、中を開ければ最悪だ」
「そんな…」
「リーズベルト公爵家なんて」
「ありえない」
詳しくないけど、リーズベルトという名前には聞いたことがある。
「優秀な生徒を妬み、集団で嫌がらせをする生徒が多いのは真実だったようだ。学園長にはくわしく説明しよう」
「止めてください!お願いします」
「そんなことをされたら…」
さっきまで上から目線だったのに態度が変わった。
「関係ないだろ?君達は学園を去る身…父君は爵位を失う。平民だと馬鹿にしているなら、その平民になってもう一度のし上がるがいい…だが、この学園で退学になった以上はまともな学校には入れないだろう」
「あっ…ああ」
「そんな」
その場で膝をつく彼女達を無視して彼は私に近づく。
「君の事は調べさせてもらった」
「はい」
「正直、これまでの君の態度は褒められない。周りの環境が悪くともだ」
言い返せない。
実際私はちゃんと見ていなかった部分が多かった。
「君一人に責任を問うことはできない。学園側も問題がある。そしてシネンシア辺境伯爵令嬢の立ち振る舞いにも問題はある」
「そんな!」
「彼女は警備責任を任されてはいるが、学生という立場だ…周りに頼るべきだった」
だからって酷いわ。
まるでリーゼロッテ様にも責任があるような。
「彼女は一人で思いつめ、洗脳に近い状況だった。君と同様に…だが最後は正しい選択をした」
「正しい選択…」
「そうだ。君は声を上げた。間違いを言葉に出した…二度と間違わないだろ」
この人は過去の私の行動は間違いでも、今ならその間違いを正せると言ってくれているのだ。
「君の功績は私からも目を見張る部分が多い…その才能を存分に使う気はないか?」
「先ほどの留学というのは…」
「君のそのつもりがあればだ…だが、この学園以上に厳しい。実力至上主義だ」
差し出されたのは留学に関する書類だった。
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