47 / 191
36花束とぬいぐるみ
しおりを挟む侯爵領に派遣していた騎士達はすべて撤退した後に、伯爵家に援助を完全に断ち切りったことで双方に大きな打撃を受けることになった。
だけど、ここまでは妥当なものだ。
なのだけど、問題は彼らがまったく反省の色がないことだ。
このままだとうやむやにされてしまう。
私にした仕打ちだけでなく、我が家を見下した彼らを野放しにすればお父様とお兄様はどうなるか。
「リゼ?入ってもいいかな?」
「レオ?どうぞ」
一人考え込んでいると扉の向こうから声が聞こえた。
「リゼ…」
「あら?その花束と…ぬいぐるみ?」
レオに手に持ってるのは花束とぬいぐるみだった。
「どうしたんですか?それ…」
「例の女子生徒からだ」
「え?キャンベルさん?」
何故キャンベルさんがレオに?
ここ数日邸に戻らなかったレオは学園に行っていたのね。
「君の留学の手続きもだが…彼女の事が気になってね」
「優しいんですね」
「人として当然だ。彼女は才能ある生徒だ…なのに茶番劇の被害者になった」
言われてみればどうだわ。
キャンベルさんは貴族社会の事はほとんど知らない。
なのに、周りが彼女を孤立させ、巻き込まれて学業にも手中できなくなってしまった。
「彼女はあの日から君の事を探していたそうだ…見つける手段はないのに」
「何故?」
「謝りたかったそうだ…」
彼女が私に謝る必要はないのに。
結局ちゃんと守ることもできなかった。
「君はちゃんと彼女を守ったよ…だからこそあんな騒ぎがあっても彼女は成績をキープしている。今は最高ランクのバッチを手に入れている」
「そうなんですか!」
すごいわ。
やっぱり彼女は優秀な生徒なのね。
実力だけでのし上がってきたのは間違いないわ。
「彼女はここで成績を落とせば君に申し訳ないと言っていた。これは渡せないと解ってながら靴箱に入れていたそうだ」
「ありがとうございますレオ」
ちゃんと会話をしたことはなかった。
立場が異なっていれば私達は友達になれたのではないだろうか。
私は彼女を嫌いだと思ったことはない。
むしろ努力を怠らない彼女をすごいと思ったのだから。
「リゼ、俺は彼女が惜しくなったよ」
「え?」
「彼女の自由研究を見たけど、見事だ…このままあの学園に残し腐らせるのは惜しい。既に彼女の才ならば文官補佐も可能だ。特に数字に強い」
見せられた研究を見ると領地経営に関するものだ。
優秀な生徒に傾いた領地をどうしたらいいか、特産物をどう売れば売れるか。
増税のご時世にどうしたら税を安くするか。
「すごい…これを」
「恐ろしい程の才だ…商人貴族でもここまでの案件は無理だ。どこでここまでの知識を身につけたか」
平民で貧しい家庭で育った彼女がどうやってこれほどの教養を学んだのか。
「彼女に目をつけた王族は相当の慧眼だ…実に惜しい」
「レオ、何を考えてますの」
にやりと笑う横顔がミカエラ様にそっくりだった。
3,496
お気に入りに追加
6,985
あなたにおすすめの小説

こういうの「ざまぁ」って言うんですよね? ~婚約破棄されたら美人になりました~
茅野ガク
恋愛
家のために宝石商の息子と婚約をした伯爵令嬢シスカ。彼女は婚約者の長年の暴言で自分に自信が持てなくなっていた。
更には婚約者の裏切りにより、大勢の前で婚約破棄を告げられてしまう。
シスカが屈辱に耐えていると、宮廷医師ウィルドがその場からシスカを救ってくれた。
初対面のはずの彼はシスカにある提案をして――
人に素顔を見せることが怖くなっていたシスカが、ウィルドと共に自信と笑顔を取り戻していくお話です。

真実の愛かどうかの問題じゃない
ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で?
よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

婚約破棄は十年前になされたでしょう?
こうやさい
恋愛
王太子殿下は最愛の婚約者に向かい、求婚をした。
婚約者の返事は……。
「殿下ざまぁを書きたかったのにだんだんとかわいそうになってくる現象に名前をつけたい」「同情」「(ぽん)」的な話です(謎)。
ツンデレって冷静に考えるとうっとうしいだけって話かつまり。
本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完
瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。
夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。
*五話でさくっと読めます。

【完結】「お姉様は出かけています。」そう言っていたら、お姉様の婚約者と結婚する事になりました。
まりぃべる
恋愛
「お姉様は…出かけています。」
お姉様の婚約者は、お姉様に会いに屋敷へ来て下さるのですけれど、お姉様は不在なのです。
ある時、お姉様が帰ってきたと思ったら…!?
☆★
全8話です。もう完成していますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。

【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです

【全4話】私の婚約者を欲しいと妹が言ってきた。私は醜いから相応しくないんだそうです
リオール
恋愛
私の婚約者を欲しいと妹が言ってきた。
私は醜いから相応しくないんだそうです。
お姉様は醜いから全て私が貰うわね。
そう言って妹は──
※全4話
あっさりスッキリ短いです

不治の病の私とは離縁すると不倫真っ最中の夫が言ってきました。慰謝料、きっちりいただきますね?
カッパ
恋愛
不治の病が発覚した途端、夫であるラシュー侯爵が離縁を告げてきました。
元々冷え切っていた夫婦関係です、異存はありません。
ですが私はあなたの不貞を知っておりますので、ちゃあんと慰謝料はきっちり支払っていただきますね?
それから・・・わたしの私物も勿論持っていきますから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる