37 / 106
閑話 その頃の学園③
しおりを挟む婚約者からの婚約破棄だけでも痛手なのに、その上親にまで知られたらどうなるか。
「何を驚いているのか…学園で問題を起こしたならばご両親に報告をしなくてはなりません」
宰相が当然だと言いたげだったが学園長は深いため息をつく。
「君の父君は教育に携わっている…来年の学校の設立は延期になるだろう」
「そんな!」
「君の母君は文官秘書だが…王族お膝元で問題を起こした以上は王宮追放だろう」
「あっ…ああ」
一時の感情で動いたせいで、両親を日陰の下で生きなくてはならない。
それだけのことをした自覚がない。
(愚かな…本来ならこの程度で済むはずがないというのに)
本来特待生に手を出す行為は来年の特待生を受け入れにくくしてしまう可能性があるのだ。
「君たちは特待生が誰に選ばれるか解っているのか?王族だ…ステラ・キャンベルは優秀な生徒故に招かれた。彼女に手を出すことは王族を侮辱する行為だ」
「そんな…知らなくて」
「彼女が伯爵家以上の令嬢でもそういうのか?違うだろう…最初から彼女の立場を理解し守ろうとしたのは彼女だけだ」
「じゃあ…リーゼロッテ様は知って…そんなの酷い!」
知っていたのなら教えてくれればいいのにと、今度はリーゼロッテを責め始める。
「勘違いするでない。彼女はそこまで知らぬ…だが特待生が重要な役目を担うのは知っていて当然だろう?君達こそ何故知らなかったんだ?」
「えっ…」
「それは…」
「平民でもチャンスを与えたいという。王妃陛下の思いを踏みにじったのですよ」
冷たく言い放つ宰相に既に言葉を放つ気力はなかった。
その数時間後。
娘達の所為で親は多忙の中から呼び出され、ことの次第を聞かされてしまい娘達を怒鳴り散らした。
「お前はなんてことを!」
「お前など勘当だ!娘でも何でもない!」
「二度と私の目の前に現れるな!」
その場で勘当を言い渡し、平民に落とされることとなる。
子供責任は親が取るものだと宰相は言ったが親達は縁を切ったので自分達だけは見逃してほしいと無様な姿を晒したのだが…
「見苦しい。子供の教育も満足にできない者に学園創立の資格はない。他の方々も自分を見つめ治した方がい」
冷たい一言で拒絶し、女子生徒達は連れていかれてしまったのだった。
「さてと、次は問題のあの方です」
「既に…」
今回の騒動を引き起こした人物でもあるアグネスの処遇についてだ。
「彼女は退学をすることなく卒業まで学園に残っていただきます。ただしクラスは降格してもらいます」
「はい、承知しております」
「学生寮で一年過ごし、ご実家との接触は絶っていただきます」
予定通りアグネスは停学も退学もなく、学園に留まることが決まったのだった。
3,472
お気に入りに追加
7,796
あなたにおすすめの小説
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる