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閑話 その頃の学園③

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婚約者からの婚約破棄だけでも痛手なのに、その上親にまで知られたらどうなるか。

「何を驚いているのか…学園で問題を起こしたならばご両親に報告をしなくてはなりません」


宰相が当然だと言いたげだったが学園長は深いため息をつく。


「君の父君は教育に携わっている…来年の学校の設立は延期になるだろう」

「そんな!」

「君の母君は文官秘書だが…王族お膝元で問題を起こした以上は王宮追放だろう」


「あっ…ああ」


一時の感情で動いたせいで、両親を日陰の下で生きなくてはならない。
それだけのことをした自覚がない。


(愚かな…本来ならこの程度で済むはずがないというのに)


本来特待生に手を出す行為は来年の特待生を受け入れにくくしてしまう可能性があるのだ。


「君たちは特待生が誰に選ばれるか解っているのか?王族だ…ステラ・キャンベルは優秀な生徒故に招かれた。彼女に手を出すことは王族を侮辱する行為だ」

「そんな…知らなくて」

「彼女が伯爵家以上の令嬢でもそういうのか?違うだろう…最初から彼女の立場を理解し守ろうとしたのは彼女だけだ」

「じゃあ…リーゼロッテ様は知って…そんなの酷い!」


知っていたのなら教えてくれればいいのにと、今度はリーゼロッテを責め始める。


「勘違いするでない。彼女はそこまで知らぬ…だが特待生が重要な役目を担うのは知っていて当然だろう?君達こそ何故知らなかったんだ?」

「えっ…」

「それは…」



「平民でもチャンスを与えたいという。王妃陛下の思いを踏みにじったのですよ」



冷たく言い放つ宰相に既に言葉を放つ気力はなかった。



その数時間後。



娘達の所為で親は多忙の中から呼び出され、ことの次第を聞かされてしまい娘達を怒鳴り散らした。


「お前はなんてことを!」

「お前など勘当だ!娘でも何でもない!」

「二度と私の目の前に現れるな!」


その場で勘当を言い渡し、平民に落とされることとなる。


子供責任は親が取るものだと宰相は言ったが親達は縁を切ったので自分達だけは見逃してほしいと無様な姿を晒したのだが…


「見苦しい。子供の教育も満足にできない者に学園創立の資格はない。他の方々も自分を見つめ治した方がい」


冷たい一言で拒絶し、女子生徒達は連れていかれてしまったのだった。




「さてと、次は問題のあの方です」

「既に…」



今回の騒動を引き起こした人物でもあるアグネスの処遇についてだ。


「彼女は退学をすることなく卒業まで学園に残っていただきます。ただしクラスは降格してもらいます」


「はい、承知しております」

「学生寮で一年過ごし、ご実家との接触は絶っていただきます」



予定通りアグネスは停学も退学もなく、学園に留まることが決まったのだった。



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