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26二人の女神
しおりを挟むかつて戦争時代の三女神の二人が目の前に。
「このような姿で無礼であるが、許してくれ」
「緊急事態だったのでな」
二国のツートップに言われれば文句なんて言えるはずがない。
隣国に至っては未だに国王と同等の権力を持ち将軍でもあるミカエラ様に頭が上がらない大臣は多いのだ。
爵位も持たない私が断れるはずもない。
「王妃陛下、この度は…」
「無礼講じゃ。この場で堅苦しい礼儀はいらぬ…ただ乱暴な真似をしたことを許してもらいたい。レグルス殿下」
「いえ、私は…」
「この度の行動に感謝いたします。貴方があの時に内々で手紙を出してくださったので急いで帰国することができました」
私が知らない話だわ。
レオは王妃陛下に私の事で手紙のやり取りをしていたということ?
何時から?
「運命という言葉は嫌いだが…二人は運命の女神がめぐり合わせたのだろう」
「どういうことでしょうか」
「レグルス殿下の名誉の為に教えておこう…リゼと出会ったのは偶然だ。だがレグルス殿下は君を知っていたというか…ずっと昔から好意を持っていたがな」
「王妃陛下!」
「まったく小心者めが…肖像画の中の姫に恋をして身を焦がしていたんだよ」
肖像画の中の私?
「後は、音楽祭で竪琴を奏で、戦場では戦死した者の為に歌っていただろう」
「はっ…はい」
「息子と君は幼少期に一度会っている…まぁ息子は私に似ずに内気過ぎたのだ。その時に声もかけらえなかったたので花だけ匿名希望で贈ったんだ」
匿名希望の花ってまさか…
「母上、王妃陛下。もう止めてください」
「ミカエラ。そなたの息子は随分と純粋じゃな」
「誰に似たのか。私は肉食系だったのに…これは夫の血だな」
不敵に笑うお二人は既に敬称も敬語もなく。
言ってみれば長年の付き合いの悪友という感じだった。
「この二人…いや、三女神がそろうとろくでもないことになるんだ」
遠い目をするレオ。
余程苦労をさせられたのだろうか。
「まったくこれだから男というものは」
「軟弱だ…だが息子はこう見えて潔癖症だから浮気はしない。将来も安泰だ。悪い離すではないと思うのだが」
「はい?」
「そもそも正式な婚約者は我が息子だったのだ。これでポンと元通りだ…君が嫌でなければだが。嫌なら良い縁談を紹介しよう。我が国の王太子か、それとも宰相の息子…なんだったら辺境侯爵で今は近衛騎士の団長がいるのだが独身だ」
「あっ…あの」
何で全員高位貴族限定?
しかも近衛騎士の団長って…ハイレベル過ぎる!
「母上!」
「致し方なかろう。我が国でならば最低でも公爵の地位を持つか王族が最低レベルだ。侯爵以下等論外だ」
知らなかった母の秘密を知り、私の立場はそんなに重いのかと察したが…
「まぁ、大公殿が許さんだろう。大事な孫娘がしょうもない男の婚約者になれば、今回の二の舞になる」
「…というか大公殿に剣術でボコボコにされるだろうな…その辺の男では」
まだ見ぬ祖父はそんなに恐ろしい方なのか。
会うのが不安になるのだけど、その前に確認したい。
「あの…私が隣国に行くのは決定事項なのでしょうか」
「無理強いはしないが、その場合寄生虫が群がり元の鞘に戻るか?補足すればあの最低男と復縁させられる可能性がある」
「えっ…」
「私が命じたとしてもあの手この手を使うだろう。まぁその時は兄君が奴らを殺しまくるが」
「なんとも頼もしいな!」
笑えない。
地獄絵図の出来上がりじゃないか!
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