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閑話 王妃の怒り②
しおりを挟むこの国では表向き君主は国王であるが他国との交渉や政治を動かしているのが王妃だった。
現国王は為政者としての才能がなく、政治に関しても疎いだけでなく。
王としての器が足りないのだ。
対する王妃は幼少期から国母としての教育に騎士としての教育も徹底的に行われていた。
王太子妃時代、隣国と一時的な同盟を結び敵国から国を守る為に戦ったのだ。
後に他国からは三女神と崇められるようになった。
隣国のカリスタ国の前国王代行のミカエラが戦女神であるならば、ティメリア王国の現王妃、ヴィクトリアは正義の女神だった。
いかなる理由があろうとも不正は許さない。
弱いものを虐げることなど論外だったが、必要とあれば荒っぽい手段に出ることもある。
綺麗ごとで生きていけるほど、王妃の座は甘くない。
守る為には時として己の手を汚すことも厭わない、愛するものを守る為なら己の身を捧げる覚悟ある。
そんな王妃を慕う者は多く。
男尊女卑の世界で理不尽な扱いを受ける女性を保護してることから救国の女王とも呼ばれていた。
故に、戦場を走った現役時代に手にしていた王家の剣は常に悪人を罰する為に今も手元にある。
目の前の悪人を今すぐきりかからんとする勢いで…
「聞こえぬか?ならばその耳切り落としてくれようか」
「ひぃ!」
「答えぬか!この下種の極みが!貴様は男以前に人ではない!」
サリオンの頬をかすった剣。
後一ミリ近ければ耳が切り落とされていた。
「お待ち下ださい。王妃陛下は誤解を…」
「ではこの写真をどう説明する」
「なっ…」
床に叩きつけられた写真は、サリオンがリーゼロッテを突飛ばす場面や、他にも婚約者をほったらかしでアグネスとダンスを踊る写真に学園ではアグネスと腕を組み、離れた距離で置かれる写真もある。
「ここ最近、視察が多かった…いや、狙っていたのであろう?」
既に普段の口調から現役時代の口調となっている時点で、冗談ではなかった。
「私は幼少期から何度も申したな?この婚約は当人同士の問題ではなく派閥の激化させないためじゃ!それを解っていてこんな真似をしたというのならそなたは国家反逆罪じゃ!」
「そんな大げさな…ぎゃああ!」
「口を開くな。貴様は既に不敬罪をしているんだ」
「何で…」
サリオンは不敬罪をした自覚はない。
リーゼロッテが格上の令嬢であることなど頭から抜け落ちているのだから。
「辺境伯爵令嬢は侯爵家よりも上だ。今は戦争時ではないから位置が変わっているが、あの方が貴様よりもずっと高位な身分であることは変わりない」
「そんな…馬鹿なことを」
「馬鹿は貴様だ!」
既に敬称で呼ぶことすらなく、王妃は剣を振り下ろした。
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