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閑話 王妃の怒り
しおりを挟む王宮内の一室にて。
人払いをされた状態ではあるが近衛騎士が傍に控え、その隣には国の重要な役目を担う者が静観していた。
ただし片手にペン、片手に分厚い手帳を持っている。
「さぁ、この場で話しなさい」
「王妃陛下…」
「この場にいる者は国の重要な役目につく者。音声録音もしっかりしているわ」
「録音!」
「学園内で犯罪未遂事件を起こしたのですから当然でしょう?宰相」
「はっ」
隣にいる宰相に視線を向ける。
「彼女は辺境伯爵令嬢です。格上の令嬢に手を出し殺そうとしたとなれば正式な裁判が行われるでしょう。その前に事情を聞く場を設けられたのです」
「しかし…」
「それとも学校内で公開尋問をされたかったでしょうか?」
有無を言わせない言葉にビクつく。
言葉こそは丁寧であるが、宰相の目は冷たかった。
若くして宰相となりこれまで悪事を働いた貴族・官僚には容赦なかったのだから。
「調書によればある女子生徒に暴言を吐き、手をあげようとしたのをシネンシア伯爵令嬢が間に入ったと聞きます」
「ほぉ?」
「その後に彼女に罵倒を浴びせた後に胸倉をつかみ頭を地面にたたきつけ複数回殴ったそうで。意識を失ってもなお手を離すこともなく彼女は頭から血を流したと」
「誤解です!少しおおげさに…」
「犯行現場はそのままにしております。こちらが写真です…残念ながらシネンシア伯爵令嬢が運ばれた後ですが。意識を失う前の映像は残っています」
「は?映像?」
「ええ、以前から学園内で虐めがありまして。彼女は証拠として映像を残せるようにと…」
「なんて姑息な…ぐぁ!」
思わず言葉にしたサリオンだったが騎士に頭を叩きつけられる。
「痛い…」
「ほぉ?そなたの婚約者は血を流していた。なのに何度も地面にたたきつけたそうだな…どんなふうにしたのかしら?同じ目にあうべきよね?」
「そんな…私は」
「女性に暴力を振るうとは、なんと愚かな…以前から婚約者に対して虐待の噂がありましたが…本人は誤解と言っていたので追求しなかったわ」
「そんな馬鹿な噂…」
「侯爵令嬢と仲睦まじい姿を彼女に見せつけたり、夜会ではわざと一人残したり、酷い時は雨の日に一人外で待たせていたり…これが酷くないと言えるのかしら?ああ、それとも伯爵家は当たり前なのかしら?」
「お待ちを…」
「王妃陛下が話しておられる中、話すとは何事だ!」
「ぐあっ…」
傍にいる女性騎士がサリオンの頭を掴み地面にたたきつける。
ただし力加減はしているので怪我をするようなことはなかったが、肉体的よりも精神的の打撃の方が強かった。
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