23 / 192
22戦女神の怒り
しおりを挟むかつて隣国の戦女神と呼ばれ、敵国の侵略を抑え込んだとの誉れ高い噂は本当だった。
「あのくそ女!」
片手でグラスだけでなくフォークもバキバキにしている。
曲げるなんて可愛いものではない、握力だけでフォークが跡形もない。
「当初、女の子が生まれ私は息子の婚約者に願った。大公殿も孫が手元に戻ってくることをそれはもう喜んだのだ!だが、あのくそ女が邪魔をした!」
既に名前ですら呼ばないあたり、侯爵夫人への怒りを感じる。
二人の間に一体何があったのか。
「身分至上主義のあの女の事だ。シャルが隣国の王族と親戚になるのが嫌なのだろう」
「待ってください。おかしくありませんか?」
お母様は元はティメリア王国の大公閣下の娘だ。
嫁入りの為に養子縁組をしているとしてもだ、何故そんな真似を。
「シャルの養子縁組は限られた者しか知らん。だが、何処かでかぎつけたのかもしれん」
「大方、自分の娘よりも立場が上になるのが嫌だったのだろう」
「坊ちゃま。事実だとしてもそんな正直に言うものっではありません。まぁ頭がおかしい方だったのは私も記憶してますわ。なんせ辺境伯爵家は王家の奴隷のように思ってますもの」
いや、ないでしょ?
時代の代わりで辺境伯爵家の形が変わっているとはいえ、国の守りを任されている立場だ。
それに、侯爵家よりも辺境伯爵家の地位は上だったはず。
ただ侯爵家でも部類があるのですべての辺境伯爵家が侯爵家よりも上というわけではないけど。
「シャルは控えめだったからな。あのクソ女が増長しても何も言わなかった。その所為で勘違いしたのだろう」
例え侯爵家よりも辺境伯爵家の方が地位が上でも王家に信頼されていれば地位は異なる。
侯爵夫人は王家に冷遇されていると思い込んだのだろう。
お母様に関しても高位貴族ではなく中位貴族の家に養子に迎えられたことでお母様は国から不要な存在だと勘違いsたということかしら?
「君をあのクソ女の娘の友人したのもどちらが上か見せしめにするためだ。友人とは表向きで侍女のような扱いをさせ社交界でも辺境伯爵令嬢を従わせているとアピールしたかったのだろう」
「それこそ自殺行為ですわ」
「それが解ってないから馬鹿なんだ」
眩暈がした。
確かに今まで少し行き過ぎる方ではあったが、王都に来てすぐの頃は右も左も解らなかった。
辺境地の常識と王都の常識は違うと教えられたこともある。
けれど侯爵夫人は私の為だと言っていて…私も自分を納得させた。
頻繁に領地に帰るようでは里心がついてなじめないと言われて滅多に帰ることもできなかった。
しかもタイミングが悪いことに里帰りの時期に、国内で不穏な動きがみられると告げられお父様とお兄様は領地を離れることが多くなったのだ。
「推測だが、あのくそ女と腰巾着男の母親が繋がっている可能性がある」
「腰巾着…」
もしかしてサリオンのことかしら?
でも腰巾着って、確かにアグネスに引っ付きべったりだったけど。
「噂は隣国だけでなく他国にも流れている。婚約者を放置して、侯爵令嬢の愛人となっていると」
「愛人…」
「ああ、不名誉な事限りなしだ。だが、もう無関係になる」
無関係になる?
それはどういうことだろうか。
「君の父親は娘が傷つけられて黙っているほど馬鹿ではないことだ」
「それは…」
「婚約破棄は確実だ。相手方が拒もうとも覆すことは叶わん」
私は耳を疑った。
お父様が既に動いていた?
サリオンとの関係は良好だと嘘をついていたのに、何故?
3,467
お気に入りに追加
6,964
あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

あなたは愛を誓えますか?
縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。
だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。
皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか?
でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。
これはすれ違い愛の物語です。

あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話

〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。

罠に嵌められたのは一体誰?
チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。
誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。
そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。
しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

毒家族から逃亡、のち側妃
チャイムン
恋愛
四歳下の妹ばかり可愛がる両親に「あなたにかけるお金はないから働きなさい」
十二歳で告げられたベルナデットは、自立と家族からの脱却を夢見る。
まずは王立学院に奨学生として入学して、文官を目指す。
夢は自分で叶えなきゃ。
ところが妹への縁談話がきっかけで、バシュロ第一王子が動き出す。

【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

愛は、これから
豆狸
恋愛
呪いだよ、とクリサフィスは呟くように言った。
「カシア嬢は呪われていたんだ」
「莫迦な。ヴァトラフォス大神官が違うと言っていたんだぞ? わかった。呪いは呪いでもあの女がフィズィを呪って返された呪いなんだろう?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる