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19隣国の事情
しおりを挟む隣国のカリスタ王国は決して貧しい国ではない。
むしろ他国よりも資材となる宝石や真珠は豊作で作物も不作はほとんど見られない。
何より、厳しい法律の元、貴族であれ王族であれちゃんと裁かれる。
他国ではまずありえないのだ。
その起源を作ったのがミカエラ様の代だった。
なので以外としか言いようがない。
「やっぱりこの歯ごたえだな」
「母上…」
バリバリとカンパンを食べている。
周りの豪華絢爛なお菓子に目もくれることもないのだ。
「最近の若い者は貧弱な菓子ばかり食べているから軟弱なのだ。戦場で菓子を食べても満腹にならん」
「母上、お願いですからこれ以上は…」
「解っていましたが。頭が痛いですわ」
あの鬼軍曹をひるませるなんて、なんて恐ろしい方なの!
「どうした食べぬのか?君も好きであろう…堅いビスケット」
「え?」
何故知っているのかしら?
私はお茶会で出される生クリームたっぷりのお菓子よりも、ビスケットや甘すぎないパイを好んでいたのを。
「シャルも好きだったからな」
どうして母の愛称を?
いいえ、名前が同じだけかもしれない。
「シャル…いや、シャルロッテ・シネンシアは私の友でな」
「なっ…」
思わず声を上げそうになった。
本当にお母様だったなんて思わなかったのだ。
「私がまだ王女だった頃に彼女は不良王女の私の話し相手として招かれたんだ」
「そうだったのですか…」
「これはオフレコだ」
既に私に話している時点でオフレコにならないのでは?とも思ったのだけど。
「シャルは聡明で気品にあふれていてな!私よりも王女らしかったぞ!ははは!」
「奥様…」
「そう怒るでない。事実だ!」
なんとも豪快な方だわ。
飾り気がなくて、少し強引だけど嫌いじゃない。
むしろ好きかもしれない。
「独身時代によく話したものだ。この世の乱れは男の甲斐性無し故だと。だから私達の時代で変えようと…そしたら本当にそうなったんだ」
「笑いごとですか」
「過去は振り返らない。それが私のモットーだ」
どうやら細かいことをあまり気にしないのはお母様と同じだったようだ。
幼い頃の記憶の中しかないけど、お母様はかなり大らかだったと聞くけど、もしかしたらミカエラ様が影響していたりしてたりして…なんて失礼なことを考えてしまった。
「私が王女から王太女をすっとばして期限付きの女王になってしまってな!」
「はい?」
「普通はありえんだろうな!だが、立て続けに男が早死にすることが多くてな。王族の中でも医者いらずの私に白羽の矢が立ったんだが…まぁ政治に関しては疎かったので君の母上に手助けして貰ったんだ」
それは初耳だ。
というかいいのかそんなことをして。
「シャル以外は手が負えなかったと言うべきか」
当時のカリスタ国の重鎮に少し物申したいわ。
他国の令嬢にそんなことを任せていいのかと突っ込みたいところだったが。
「まぁ、シャルロッテは大公閣下のご息女だったからある意味適任だったがな」
とんでもないことを聞かされた。
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