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13怒れる瞳
しおりを挟む声を荒げ、怒るレオに驚く。
これまで一度でも怒った表情を見ることおはなかった。
何時も私の言葉に耳を傾け、時には笑わせてくれたレオが嫌悪感を露にした。
「人として最低じゃないか」
「レオ、落ち着いて…」
「何故君は黙っているんだ。もっと怒っていい、派閥の不和を考えてか?それとも王家への忠誠心故か?」
穏やかなレオがここまで感情的に怒るとは思わなかった。
「君は学園の警備責任を任された。それは王家からの強い信頼を得ている証拠だ。その君を軽んじることは反逆罪に等しい。いや、そもそも君にすべてを丸投げすることこそおかしいだろ」
「レオ、それ以上言ってが不敬になるわ」
「大丈夫だ。万一なったとしても痛くもかゆくもない…」
冗談に聞こえない。
まるで恐れていないと言っているようなものだった。
「君に一人にすべてを丸投げした王、学園側。婚約者を窘めることもしない王太子殿下…皆同罪だ」
レオの方が傷ついているように見えた。
私の代わりに怒って、傷ついているように見えて痛々しかった。
「いつも優しい人間が犠牲になる。その犠牲の上で周りは少しでも顧みたか?」
「もういいんです」
「良くない」
国王陛下が何を思ってらっしゃるかは解らない。
王太子殿下に対してもだ。
だけど苦しんだのは私だけじゃない。
「学園側の警備責任者を任せてくださった宰相閣下はどれだけ苦しんだか解りません」
「だとしてもだ」
「あの方が当初反対されました」
学園側の問題に関してはずっと長い間問題視されていた。
その昔は貴族だけが通う学園ではなかった。
財を持つから名門校に通えるんじゃない。
国が重宝する才能を持つ者が学ぶ場を与えられるのだと。
でも実際はどうだろうか。
身分が低ければ嫌がらせを受け、理不尽な扱いを受ける。
学園側は教師が介入し過ぎればさらに状況は悪化する。
苦肉の策として学園内では保護者は干渉できないシステムを作った。
けれど生徒同士の問題すべてを把握はできず。
下級貴族が評価を受ければ高位貴族に恨まれる事態は把握できても、嫌がらせを止めさせるのは難しかった。
だからこそ二十年前に生徒会に権限を与えた。
そのおかげで少しは改善できたが、虐め等が完全になくなるわけではない。
宰相閣下は学園の状況に胸を痛めながらもできる限りのことをされた。
元々学園に警備隊をと意見されたのはあの方だった。
警備責任者を生徒に任せたのも、生徒ならば自主性を重んじる校風を変えることはないからだ。
そしてその役目は代々辺境伯爵件令息、令嬢が任されてきたのだから。
私が任されたのは辺境伯爵家の娘であると同時に、侯爵令嬢と懇意な関係だからだ。
伯爵以下の令嬢では面白く思わない者も出て来るからだし。
もう一つ理由がある。
私にその役目を推薦したのはアグネスの母、侯爵夫人だったからだ。
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