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10厚遇

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王都内に住まう貴族のお邸には特徴があった。
邸は貴族の地位の象徴と言われている。


私の実家、シネンシア辺境伯爵家は見た目よりも警備を重視している。
外装は白で統一され調度品も古く、最近流行の品とは異なっている。

煌びやかではないけど清楚感がある。
対する宮廷貴族は古い美術品をあまり好まず派手さが目立つ。

とはいえ邸の広さはそこまで広くない。
王族、もじくはそれにつらなる家でなければ大きな邸は持てないのだ。


だとすればだ。
私がお世話になっているこのお邸は…と思う中。


もう一つの疑問が浮かぶ。


レオの正体だ。
こんな広いお邸で、しかも警備の人数も高位貴族でも王族に近い者でなければあり得ない。


何より…


「失礼いたします」

「はい」


「本日のお召し替えを」


数名の侍女が入って来たと思えば見せられたのは軽装だった。
コルセットを使わずに済むようにとの配慮だろうが、見るからに上等なワンピースで冷や汗が流れる。


「お嬢様、このワンピースは絹です。しかも生地だけでなく刺繍も」


「こんな上等なもの着れないわ…」


王族の中でも王女殿下がお召し物にするような品だわ。


「あの…こちらを着るのでしょうか」

「お気に召されませんでしたでしょうか。でしたら別のデザインのものを用意させます」

「いえ、そうではなく」


通じない。
気に入らないとか云々の問題じゃない。


「主より、姫様には…」

「姫?」

何故に?
ますます解らなくなる私は困惑した。


「お邸にお世話になりあまつさえこんな上等なお召し物を用意していただくのは心苦しく」

「そのようなお気遣いは不要でございます。姫様がお召しになられないならば処分させていただきます」

「処分…」

「はい」


この人普通に恐ろしいことを言ったわ。
このワンピース一着でどれだけすると思っているの。

お金の問題じゃないわ。


「お嬢様、ここは素直にお受けした方がいいかと」

「そっ…そうね」


耳打ちするアンナの言葉は最もだ。


「ありがたく着させていただきます」

「では今から湯殿準備を。お仕度と、主治医がすぐに参りますで」

「はい?」


着替えるだけで何で湯殿を用意する必要が?
それに主治医って言ったかしら?


「女医ですのでご安心を。姫様に無礼のないように命じております。不快なことがあれば即座に私が処分いたします」


「処分…」


何でこんなに丁重に扱われるの?


「主よりくれぐれもと…」


「はっ…はぁ」


今は従う他なかった私はされるがままだった。

しかしこの時私は知らなかった。



「本日、姫様のお体をお流しさせていただきます」

「どうぞなんなりと」


いくら体が自由に動かすのが難しいと言えど湯殿に入る前から複数の侍女が待ち構え、湯殿にも使用人が待機している状態だったのだ。


「あの…彼女達は」

「湯殿係でございます。脱衣いる者は姫様の着替えを担当します」


頭の中が真っ白になった。
アンナに至ってはもう固まっている状態だった。




けれどこんなのは序の口であると後に思い知らされることとなるのだった。



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