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8保護者
しおりを挟む私にとって宰相閣下は王都に来てから親代わりのようなものだった。
早くに母を亡くして女親がいないこともあってか奥方は母親代わりをしてくださった。
「幼馴染という関係に甘え過ぎだ。離れて行かないと思い込んでいる」
宰相閣下の言葉は正論だった。
いくら幼い頃からの付き合いだからと言って離れないはずがない。
私は既にアグネスに対して失望感しかない。
いいえ、そもそも彼女は私を友人と思っていないのかもしれない。
「そもそも彼女は私をよく思ってないのかもしれません」
「リゼ…」
「ずっと彼女の為にと努力しました。でも…」
私と彼女では環境が違い過ぎる。
幼い頃から自信に満ち溢れ、努力もしてきたのは知っている。
友人として支えたい。
そう思ったことは嘘じゃないけど。
「所詮は他人ですから」
「まさか…そんな酷いことを言われたのか」
「いえ…事実です」
どんなに言葉を尽くし心を尽くしても届かない。
「私は結局、彼女の友人として相応しくありませんでした。上手く立ち回れなかったのですから」
社交界では感情的になってはならない。
常に腹の探り合いであることは解っていたのに、私は実行できなかった。
「君は何も間違っていない。立場の弱い生徒を見捨て保身だけ考えるような貴族がばかりでは民はついてくるのか?少なくとも君はずっと苦しんでいただろ…行動に移したではないか」
「レオ…」
「被害者である彼女を表向きに守って正義の味方気取りをして肝心なところで守れない王子よりもな」
「…返す言葉もない」
泣きたくなった。
私は何もできないことを嘆いていたけど、解ってくれる人がいる。
この言葉だけで十分だわ。
救われたのだから。
「処分に関してだが、私は関与できないが、貴女が咎められることはない。あってはならない」
「殿下…」
「すべては私の落ち度だ。婚約者を止められなかったのだから」
私の処分は学校側とも話し合いで決められるだろう。
万一退学にならなかったとしても婚約は良くて解消、もしくは破棄となる。
そうなった時、伯爵家から相応の者を要求されるかもしれない。
あの場で手を出したとしてもだ。
男尊女卑のご時世で女性には厳しい。
「リゼ、今は自分の体を休めることを考えて」
私の不安を察するように手を握ってくれた。
「貴方は誰なの…」
「俺はレオだよ」
私の問いには答えてくれなかったけど、今は知るすべもない。
けれど、こに場にいるということは学園の生徒、もしくは関係者。
何より王太子殿下に対してこんな態度を取って許されるなんて。
だけど私は過労と精神的にも限界だったこともあり、意識を保つことができなかった。
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