7 / 194
6心の叫び
しおりを挟む大切なのは一歩踏み出す勇気。
私はずっと誰かに背を押して欲しかったのかもしれない。
だからこそ、私は踏み出した。
きっと彼女も踏み出す為に誰かに背を押して欲しいと思うのは傲慢かもしれない。
でも――。
「私はしてません」
か細い声だった。
だけど私の耳にしっかりと入ったのだ。
「私は噂のような不義は働いていません。この学園の名を汚す行為は何一つと」
「なっ…」
「ふざけるな!」
しっかりとした声で言い放つキャンベルさんに真っ先に否定した二人だったけど。
「ふざけているのはどっちなの?真実を確かめるなら学園内の防犯装置を確認しましょう」
「え?」
「彼女は一度でも男子生徒と二人きりになったことはありません」
これは事実だわ。
事前に学園内の警備員、用務員に確認させている。
「この証言は第三者によるものです。彼女は潔白を告白しています」
「何を言ってますの!彼女は現に生徒会の皆さんをたぶらかして…」
「生徒会の皆さんは我が校の代表生徒です。そんなうかつな真似をするとしたら、彼らに問題がありますわ…何故なら彼女は転入生で何も存じないのですから?」
「そっ…」
「彼女は本年度の代表生徒。代表生徒の彼女を袋叩きにして学園から追い出せばどうなります」
「でも!」
今まであえて言わなかった。
彼女達を刺激するべきではないと思った私が馬鹿だった。
中立側と思っていたけど私はなんて傲慢な真似をしたのか。
「ではこの場にいる皆様にお聞きします。我が校は実力主義です。この学園に入るのは簡単でしたか?」
「そんなはずないだろ」
「この学園に入るのにどれだけ苦労したか」
「そうよ!」
学科、実技。
すべてをクリアするのにどれだけ大変か。
「特待生に入る生徒は私達よりもずっと厳しい条件があります。一度でも基準点を満たせなかったら即退学ですわ」
「えっ…」
「彼女が男子生徒と遊んでいる暇はありましょうか…それとも彼女は他人と会話もするなと?」
生徒会の最初の仕事は雑用から入る。
会話をしないで雑用をこなすのは不可能だわ。
「アグネス様、我らの王太子殿下は困っている転入生を見て見ぬふりをする方ですか」
「それは…」
「私が知る限り殿下は冷酷な方ではありません」
直接のかかわりはない。
けれど、努力家で真面目な方だとお兄様から伺っていた。
「私は間違っていました。彼女の境遇を早々に学園長に報告すべきでした」
「何を…」
「キャンベルさんが嫌がらせを受けている事実。そして未然にふぜげなかった私の責任を」
私の言葉に真っ青な表情をする生徒達。
口をつぐむ者たち。
自分の非を認めず、逃げようとする者。
多くいる。
だけどあの二人は私を睨みつけた。
まるで自分は悪くないと言いたげだった。
「ふざけるな!貴様ぁぁぁ!」
サリオンは怒りのまま私の胸倉をつかみ私の頭を鷲掴みにして地面にたたきつけた。
「うっ!」
「裏切者が!」
怒りで我を失っているのか、それともこれが彼の本性なのか解らない。
「やっ…止めてください!」
「触るな民草が!」
唯一キャンベルさんが止めに入ってくれたのは解ったが地面にたたきつけられた後に頭を殴られた痛みで意識が遠のく最中。
「リゼ!」
声が聞こえた。
レオの声だった。
3,470
お気に入りに追加
6,925
あなたにおすすめの小説

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。


あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・

悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。
ごろごろみかん。
恋愛
旦那様は、私の言葉を全て【女の嫉妬】と片付けてしまう。
正当な指摘も、注意も、全て無視されてしまうのだ。
忍耐の限界を試されていた伯爵夫人ルナマリアは、夫であるジェラルドに提案する。
──悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
侯爵家の令嬢ジェニエル・フィンガルドには、幼い頃から仲の良い婚約者がいた。数多くの候補者の中でも、ジェニエルは頭一つ抜きんでており、王家に忠実な家臣を父に持つ彼女にとって、セオドール第一王子との結婚は約束されたも同然だった。
年齢差がわずか1歳のジェニエルとセオドールは、幼少期には兄妹のように遊び、成長するにつれて周囲の貴族たちが噂するほどの仲睦まじい関係を築いていた。ジェニエルは自分が王妃になることを信じて疑わなかった。
16歳になると、セオドールは本格的な剣術や戦に赴くようになり、頻繁に会っていた日々は次第に減少し、月に一度会うことができれば幸運という状況になった。ジェニエルは彼のためにハンカチに刺繍をしたり、王妃教育に励んだりと、忙しい日々を送るようになった。いつの間にか、お互いに心から笑い合うこともなくなり、それを悲しむよりも、国の未来について真剣に話し合うようになった。
ジェニエルの努力は実り、20歳でついにセオドールと結婚した。彼女は国で一番の美貌を持ち、才知にも優れ、王妃としての役割を果たすべく尽力した。パーティーでは同性の令嬢たちに憧れられ、異性には称賛される存在となった。
そんな決められた式を終えて3年。
国のよき母であり続けようとしていたジェニエルに一つの噂が立ち始める。
――お世継ぎが生まれないのはジェニエル様に問題があるらしい。

〖完結〗醜いと虐げられて来た令嬢~本当は美しかった~
藍川みいな
恋愛
「お前は醜い。」ずっとそう言われてきたメリッサは、ずっと部屋に閉じこもっていた。
幼い頃から母や妹に、醜いと言われ続け、父テイラー侯爵はメリッサを見ようともしなかった。
心の支えは毎日食事を運んでくれるティナだけだったが、サマーの命令で優しいふりをしていただけだった。
何もかも信じられなくなったメリッサは邸を出る。邸を出たメリッサを助けてくれたのは…
設定はゆるゆるです。
本編8話+番外編2話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる