上 下
5 / 96

4言葉の刃

しおりを挟む





先の見えない未来に嘆くのではなく今できることをしようと勤めて来た。
だけどもう限界だと感じていた。


だけど途中で逃げ出すこともできず、私は精神を病むようになった。


「また懲りないで!」

「本当に非常識だわ!貴女はアグネス様のご友人なのに!」

現状維持の状態で不満を持つ彼女達の怒りの矛先は私に向き、怒りを向けられるようになった。
これ以上の刺激は危険だと思って受け流す日々の中、アグネスの気分を晴らすべくサリオンは舞踏会に参加しようと言い出した。


ただ私も同行することになった。

「アグネス一人で参加させるなんてできない。お前も参加しろ…馬車の手配もな」

「解ったわ」

サリオンはどうにかしてアグネスを元気づけたかったのだろう。


だけど…


「リーゼロッテ様、よろしいのですか」

「最近のサリオン様の行動は目に余りますわ」

「いかにお従妹が大事だからと言って」


同情的なクラスメイトはちゃんと話すべきだというも私は微笑むだけだった。


「精神的にも辛い状況にいるのは彼女ですから。私はこんなことしか」

「ですが…」


アグネスの心が落ち着けば、きっと大丈夫だと思っていた。


けれど舞踏会で二人はダンスを踊り私に演奏をさせた挙句に放置された。



噂はさらに酷くなる一方だった。
二人は私を顧みることもなく、さも当然の態度だった。



そして宰相閣下からの手紙だ。


「もう…無理なのかしら」


「お嬢様」


宰相閣下は私を責めるようあ言葉は書かれていない。
むしろ謝罪の言葉まで書かれていた。


「私は、何をしているかしら」


手紙を握りながら情けなさでいっぱいになる。
申し訳なくて仕方なかった。


だから私はちゃんと言葉に出そう。
今までちゃんと取り合ってもらえなかったけど友人としてはっきり伝えようと思ったのだ。


キャンベルさんに対する嫌がらせを止めなくてはならないが、その前にちゃんとアグネスに。



だけど――。


「所詮貴女は他人事なのよ」

「アグネス?」

「そうだ、他人のお前が口を出すな」



正直に私の気持ちを伝えた。


「アグネス…私は!」

「貴女は私の親友なのに!どうしてなの!」

「最低だな!そもそもお前が頼りないからだ。目障りだ消えろ!」



上手く息ができない。


苦しい。




「はっ…」


胸を押さえ、しゃがみ込む。



「他人事…私はずっと貴女を支えようと頑張ったのよ」



私の頑張りは空回りして、まったく伝わらなかった。
伝わらない思いは何所に消化したらいいのか。


そんな時だった。



中庭の方でもめる声が聞こえた。


「いい加減に身の程を弁えなさい!」

「みっともないと思わないのか!」


後ずさるキャンベルさん。


アグネスとサリオンが彼女を責める。


これはもう注意じゃない。


「二人とも!」


私はこの時、冷静さを失っていたかもしれない。


けれど人として動かなくてはならないと思い行動した。


アグネスに私の言葉は届かない。

サリオンも私を煩わしいと思うなら、もう気を使う必要はない。


人としてすべき行動をしようと思ったのだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた-- 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は-- ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

処理中です...