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4言葉の刃
しおりを挟む先の見えない未来に嘆くのではなく今できることをしようと勤めて来た。
だけどもう限界だと感じていた。
だけど途中で逃げ出すこともできず、私は精神を病むようになった。
「また懲りないで!」
「本当に非常識だわ!貴女はアグネス様のご友人なのに!」
現状維持の状態で不満を持つ彼女達の怒りの矛先は私に向き、怒りを向けられるようになった。
これ以上の刺激は危険だと思って受け流す日々の中、アグネスの気分を晴らすべくサリオンは舞踏会に参加しようと言い出した。
ただ私も同行することになった。
「アグネス一人で参加させるなんてできない。お前も参加しろ…馬車の手配もな」
「解ったわ」
サリオンはどうにかしてアグネスを元気づけたかったのだろう。
だけど…
「リーゼロッテ様、よろしいのですか」
「最近のサリオン様の行動は目に余りますわ」
「いかにお従妹が大事だからと言って」
同情的なクラスメイトはちゃんと話すべきだというも私は微笑むだけだった。
「精神的にも辛い状況にいるのは彼女ですから。私はこんなことしか」
「ですが…」
アグネスの心が落ち着けば、きっと大丈夫だと思っていた。
けれど舞踏会で二人はダンスを踊り私に演奏をさせた挙句に放置された。
噂はさらに酷くなる一方だった。
二人は私を顧みることもなく、さも当然の態度だった。
そして宰相閣下からの手紙だ。
「もう…無理なのかしら」
「お嬢様」
宰相閣下は私を責めるようあ言葉は書かれていない。
むしろ謝罪の言葉まで書かれていた。
「私は、何をしているかしら」
手紙を握りながら情けなさでいっぱいになる。
申し訳なくて仕方なかった。
だから私はちゃんと言葉に出そう。
今までちゃんと取り合ってもらえなかったけど友人としてはっきり伝えようと思ったのだ。
キャンベルさんに対する嫌がらせを止めなくてはならないが、その前にちゃんとアグネスに。
だけど――。
「所詮貴女は他人事なのよ」
「アグネス?」
「そうだ、他人のお前が口を出すな」
正直に私の気持ちを伝えた。
「アグネス…私は!」
「貴女は私の親友なのに!どうしてなの!」
「最低だな!そもそもお前が頼りないからだ。目障りだ消えろ!」
上手く息ができない。
苦しい。
「はっ…」
胸を押さえ、しゃがみ込む。
「他人事…私はずっと貴女を支えようと頑張ったのよ」
私の頑張りは空回りして、まったく伝わらなかった。
伝わらない思いは何所に消化したらいいのか。
そんな時だった。
中庭の方でもめる声が聞こえた。
「いい加減に身の程を弁えなさい!」
「みっともないと思わないのか!」
後ずさるキャンベルさん。
アグネスとサリオンが彼女を責める。
これはもう注意じゃない。
「二人とも!」
私はこの時、冷静さを失っていたかもしれない。
けれど人として動かなくてはならないと思い行動した。
アグネスに私の言葉は届かない。
サリオンも私を煩わしいと思うなら、もう気を使う必要はない。
人としてすべき行動をしようと思ったのだ。
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