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2苦悩の中で
しおりを挟む貴族と平民という隔たりは簡単に取っ払うことはできない。
だけど歩み寄るにしてもやり方があった。
だけど、今の現状では友人もおらず心細い中に厳しい言葉を放った所為で委縮してしまった。
最悪な事に、その現場を見た王太子殿下がアグネスを注意したことで最悪な展開となった。
これ以上騒げば大変なことになると思い私は間に入ろうとした。
だけど。
「そもそもお前が先にあの女子生徒を躾けるべきだろう!」
「サリオン、そんな言い方は止めて…躾けって、彼女は生徒よ」
「平民だろう。しかも男を誘惑する毒華だろう」
噂を鵜呑みにしていて糾弾していた。
そして矛先は私にまで来るようになった。
「サリオン止めて…リゼは悪くないわ」
「いや、これはリーゼロッテの失態だ。こんなことでは困る」
婚約者として情けないとまで言われ、私は何も言えなかった。
事前に対策ができなかったのは事実だが、私自身も彼女に関しては何も知らされていなかったので対策もできなかった。
それからだった。
サリオンがアグネスの傍から離れなくなったのは。
休み時間はもちろんのこと、昼休み休日とべったりで。
その所為で悪い噂が流れ始めた。
学園の名に傷がつけば隣国にも噂が流れてしまえば国同士の関係も悪くなる。
学園とは国同士をつなげる大事な外交の場でもある。
直接的な政治をするわけではないが、交換留学をして両国の歴史を知り、後に国同士の婚姻関係を円滑に結ぶものなのだから。
なのに状況は悪くなる一方。
アグネスと王太子殿下の間で話を場を設けられたが、関係は悪化した。
嫌がらせも酷くなる一方でできるだけ被害が増えないように、私は警備員の増員に人気のない場所に行かないようにしたけど、嫌がらせがなくなるわけではない。
しかも私が動けば動くほど…
「お前はアグネスの為に何故あの女を追い出さない!」
「キャンベルさんは何の落ち度もございません」
「殿下と現に…」
「彼女と殿下は同じクラスです。二人きりならばまだしも…」
「そんなことを聞いているんじゃない!」
私はできるだけ冷静に話をしても感情的になっているサリオンは聞く耳を持ってもらえない。
どうして解ってくれないの?
キャンベルさんがどう思っていようと現段階では問題を起こしていない。
むしろ彼女は嫌がらせをされても耐えている。
教師に報告することもできるのに。
「彼女は一人耐えているのですよ」
「演技だろう?男心をくすぐるための」
「サリオン…」
「とにかくあの女を助けるな!お前はアグネスの為に動け!」
その場に残された私は一人泣いた。
「私はアグネスのオマケなの…私の意思は関係ないの?」
この時私は初めて泣いた。
ずっと頑張って来た私は悲しみのあまりその場から動けなくなった。
幼い頃、親元から離され十年。
必死に頑張って来たつもりだったけど、頑張りが足りなかったのか。
「ダメよ…負けちゃダメ」
こんなことで役目を放棄するなんて無責任なことは許されない。
アグネスは今精神的に不安定なのだから。
王太子殿下の婚約者であることは相当なプレッシャーのはずだわ。
幼い頃からアグネスを見まり続けて来たサリオンも辛いのだと思い、気持ちを切り替えることにした。
この時はまだ私は、二人を信じていた。
馬鹿だった。
二人の中に私はいなかったというのに。
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