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1馬車の中でのため息

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舞踏会が終わり帰路の途中。
私はようやく一息つくことができた。

「お嬢様大丈夫ですか」

「ええ、問題ないわ」

舞踏会が終わった後主催者に挨拶をしている間に二人は早々に帰ってしまった。
私に一言もなくいなくなっており、周りは更に同情の視線を向けたけど無視をした。

社交界の噂を気にしていたら仕方ない。


「サリオン様はどうして…」

「ここ最近アグネスの元気がないからでしょうね」

誰よりもアグネスを深く愛しているサリオンは気分転換をさせたいというのは解る。

「今の学園は風紀が荒れているから」

「だからと言ってお嬢様を軽んじていい理由には」

「そうね…」


王太子殿下の婚約者である彼女の立場の重要性は理解している。
幼い頃は友人だったけどもう子供でない。

友人だというけど、サリオンは私に忠実な臣下として接することを望んでいるのかもしれない。

けれど私はアグネスの侍女にも女官にもなる気はない。
辺境伯爵令嬢としての立場があるし卒業したらアグネスの傍にいられない。

王家に入るまでの手助けをしてほしいという王命もあったが、あくまで友人としての手助けをしてほしいとのことだ。



けれど今の状況は友人と言えるのか。


いいえ、今は情緒不安定になっているのよ。
そう言い聞かせながら馬車は邸に到着したので気持ちを切り替えることにした。


「お嬢様お帰りなさいませ」

「ただいま」

出迎えてくれたアンナ。


皆に心配をかけてはらない。
この程度で揺らんではいけないと思っていた。


そう、今は不安定なアグネスを支えないと。

そう思っていたのだけど。


「お嬢様、火急で手紙が届いております」

「手紙?」

差出人を見ると宰相閣下からだった。


「何故私に?」

「妙ですね」


通常、火急で手紙を送るならお父様のはず。


とにかく急いで手紙を確認しようとした私は内容を見ると。


「これは…」


手紙を握りしめ、手が震えた。


「お嬢様?」

「学園の騒動が、問題とっているそうよ」

「例の茶番劇ですか」


随分とした言い方だわ。
でも、ある意味間違いではないのだけど。




現在学園内ではとある問題に直面している。
王立学園であり王族が通う学園にて不祥事が起きているのだ。



事の発端は半年前に遡る。




長い歴史を持つティメリア王国で一番伝統のある学園。
国内に学校はあれど、王立学園は偏差値も高く、入るだけでも一苦労だった。


貴族だろうと王族だろうと不正は許されない。
万一入試で不正を働けば厳しい裁きが下り、一生後ろ指をさされる。


それだけ徹底されている。


そんな学園に途中編入して来た生徒がいる。


入学式から一か月遅れて入った彼女は編入試験で首席だった。

その人物が隣国の王族、貴族なら納得する生徒もいたが、その人物が平民の少女だった。
彼女の名前はステラ・キャンベル。


後ろ盾もないごくごく普通の少女だった。

我が学園に入る生徒の中にはストレートで入れない受験者も多い。
にも拘らず彼女は一発合格し、尚且つ特別科のクラスだったこともあり周りは納得できなかったようだ。


挙句の果てに彼女の世話役をするのは生徒会の役員。
王太子殿下や王族に連なる方々が行っていることから悪い噂が流れ始めた。


信憑性のない噂だ。
学園内では実力主義となっているので身分差別はないと言っていても、難しい話だった。


平民の少女が貴族達よりも優秀だということを認めたくない。
噂を鵜呑みにする生徒は日に日に増えていくのに対して、その噂に独り耐えている彼女を庇う王太子殿下を筆頭に生徒会の皆さんは自分で自分の首を絞める行為を行ってしまい悪循環になっていた。


この状況を改善するべくアグネスが間に入ったのだがそれがそもそもの間違いとなった。


平民である彼女と、高位貴族で血筋を優先するアグネスは水と油だったからだ。




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