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第三章
46それぞれの進路
しおりを挟む何時までも平行線の二人。
だけど、エレーナ様も心を決めているだろう。
王太子殿下である以上は、婚約者を早く決めないといけない。
「殿下はどうされるのでしょうか」
「婚約者の件は気長に待つそうだ」
「え?」
てっきり急いでいると思ったのだけど意外だった。
「家柄重視をして、とんでもないことになったからな」
「確かに」
家柄は大事だ。
でもそれだけで王太子殿下の役目が務まるわけじゃない。
「やはり精神共に鋼のようなエレーナ嬢の方がいいのではないかと言う声がある」
「では!」
「時間の問題だ」
次々と新しい発明品を開発し干ばつだけでなく、貧しい領地を救うべく改革を行っている。
もうただの研究者ではない。
いち貴族令嬢の枠から外れている。
「王室の椅子に座るのは面倒だと言っているが、彼女の貴族令嬢だ」
「覚悟はしているでしょう」
「ああ…今は理由をつけて逃げているが」
内心では心を決めている。
それに殿下が傍にいれば加護の中の鳥ではないわ。
「エレーナ様の夢を守れるのは殿下だけ」
「だろうな。それに好いた女性を手に入れる方法を何が何でも考えるだろう」
「はい」
長い長い片思いをしていたのだからどうか実って欲しい。
国の為にすべてを諦める必要ない。
「俺はかつて諦めていた…でも諦めなくて良かった」
「私の手を掴んでくださってありがとうございます」
「お礼を言われるような真似をしていないさ」
でもフィル様が手を伸ばしてくれなかったら私はここまで踏ん張れなかった。
もしかしたら前世と同じような末路だったかもしれない。
「君が扉を開いたからだ」
「扉?」
「未来を掴む扉だ」
ずっと閉じていたもの。
それを未来をの扉と人は言うのかもしれない。
「一人では怖くて開けられませんでした」
「俺もだよ」
不思議な縁だわ。
決して交わることがなかったかもしれない人と縁を結び、その縁が私に選択権をくれた。
「今の私は幸せです」
「俺もだよ」
フィル様に身を預けながらそっと目を閉じる。
「ん?何か焦げ臭いような」
「ああ、それに煙が…」
何かを忘れているような気がする。
そう我らがトラブルメーカーの彼女を。
「助けてください二人共!」
「何をしているんだ!」
そう我らが問題児でヒロインが危険な薬を持っていた。
「ちょっと薬の配分を間違えて爆発します!」
扉が開いても平和は程遠いようだ。
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