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第三章
41悪意の矛先
しおりを挟むある程度想像はできていた。
私が面会に行くのはあらかじめ伝えていない。
ただ王家の人間が行くと伝えたのみ。
既に私達は婚約を結び、挙式を上げれば名実とも夫婦になる。
籍は入れているけどね。
この世界では夫婦となるには二つある。
まずは平民の場合は挙式を上げる前に籍を入れる。
その後に挙式を上げるのだけど、貴族の場合が大半は籍を入れる前に挙式を上げて、その後に正式に籍を入れる。
だけど、私達はあえて逆の手を使った。
いわばこれは小さな仕返しと、皆さんの願いだった。
私が王族という立場になれば、オレリアの神経を逆撫ですることになるけど。
手を出せば今度こそ身の破滅だ。
それを狙っているのだろう。
主に宰相閣下が。
ここまでオレリアを毛嫌いしているのによく王太子殿下の婚約者に選ばれたものだ。
それなら侯爵家以下の令嬢を婚約者に奪う方がいいのに…とも思ったけど。
国王陛下が病床に伏しており、王妃陛下が代理をするとしても反対勢力が動いたのかもしれない。
詳しくは解らない。
でも、王族派の勢力が弱まっていた時期がある。
添い考えると納得は行くのかもしれない。
まぁ、王家の事情は今は後だわ。
「何でアンタがいるのよ!」
「狭い部屋でそうキャンキャン叫ばないでくださる?鼓膜が破れるわ…さぁお座りなさいな」
「私に命令してんじゃないわ…ぎゃあ!」
「座れ。公爵夫人になんて無礼な」
「はぁ?」
いや、私はまだ公爵夫人じゃないわよ。
籍は入れたけど挙式は上げてないし、実質公爵家の女主人になるのはまだ先のことだし。
「キャサリン様、どうかご無礼を」
「気にしませんわ。慣れましたから」
「貴様、どれだけ愚行を繰り返したのだ!」
早くその掴んでいる手を離して欲しくて言ったのだけど、見張り役の騎士さんはこれでもかというほどにオレリアの頭を掴んでいる。
ミシミシ音がしているのだけど大丈夫かしら?
「馬鹿は死んでも治らないだろ」
「さりげなく酷いですね」
「酷いのは彼女の脳だ」
確かにこの状況下で未だに私に悪意をぶつけるなんて頭のネジが足りないと思うけど、このままでは話が進まないわ。
「手を離してくださいますか」
「承知しました」
うん、流石だわ。
私が離すように言えば素直に手を離してくれた。
「何で…何でアンタが!」
「私以外に誰が来ると思ったのです。とにかく座りなさい…嫌ならそのままでもいいけど」
「くっ…」
周りの視線に耐え切れず断念したわね。
最初からそうしていれば痛い思いをしないで済んだのだけど。
でもここまで想定内だわ。
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