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第三章

40最も憎い人物~オレリアside

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時間も解らず、どれだけこの牢獄にいたのかもわからない。
地獄を待つ時間がこれほど恐ろしいのだと知った私はただ小さな窓から外を見ていただけだった。


誰も面会に来ない。
あの弁護士も来なくなった。

もう終わりだわ。
ロイドと夫婦になるなんて悪夢でしかない。

あの男に何の価値もない。

どうしてここまで苦しめられなくてはならないの?

私はそんな悪い事をした?
少しキャサリンに意地悪をしただけじゃない。

こんなの酷すぎる。


「そうよ…全部悪いのは」

キャサリンじゃない。
元凶であるのに、私の保釈金を支払うこともなく会いに来ることもないなんて。


心がないのはキャサリンよ。
私にこんなことをして許されるわけがないわ。


鏡に向かって毎日のように呟く日々。
言葉を発するのはその時だけだった。


そんな最中。

見張りの男が牢の扉を開いた。


「出ろ」

「え?」

両足と両手首にされていた枷を外された。


「お前に面会だ。ただし暴れるなよ」

「本来なら王族の方がお前と直接会うなどあり得ぬのだ」


王族ってもしかして。


「無礼のないように」


そうだわ。
フィルベルト様だわ。


やっぱり私を見捨てていなかったのね。
きっと面会日を取り付け私はあの方に救われるのだわ。

そして私は公爵夫人となるのね。
そうよ、キャサリンを愛するなんておかしいわ。

きっと私を救うためのカモフラージュだったのよ。


さっきまでの絶望感は希望に満ち溢れていた私は牢を出た後に面会が許される部屋に連れて行かれた。


「どうしてここなの」


罪人が面会を許される部屋だった。
ガラスの壁で隔てられ、言葉を交わすことはできる。


だけど会話はすべて見張りに聞かれ監視されてる状態。


「ありえない!何でよ・・」

「静かにしろ!無礼がないようにな…お待たせしましたキャサリン様」

「は?」

キャサリンですって?


間を置かず扉が開きそこにいたのはキャサリンだった。


「何で・・」

「ごきげんようオレリア嬢…いいえ、フォーカス夫人と呼んだ方がいいかしら」


希望が絶望に変わっていく。
本来私を助け出してくれるはずの王子様は憎い女の手を握っていた。


「どうしてアンタが!何でアンタなんかがフィルベルト様と一緒なのよ!」


地味でさえなかったはずのキャサリンは雰囲気が変わり大人の女性そのものだった。
まるで私に当てつけのように隣に立つフィルベルト様に複数の護衛。

まるでキャサリンがお姫様のようで不愉快な気持ちでいっぱいだった。


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