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第三章
23すべては悪夢~ロイドside②
しおりを挟む乳母と乳兄弟を追い出す形になったが、使用人は他にもいると思っていた。
だが…
あの二人が辞めてから邸の周りが回らなくなり、綺麗に整えられることはなかった。
それだけでなく、フォーカス家は多額の借金を背負うことになった。
「母上、多額の借金があるとはどういうことです!」
「仕方ないでしょう?今まではクレイン家の援助ですべてなんとかなっていたのよ」
ある日俺は借金の借用書を見つけて真っ青になった。
元より先代より借金があり、十数年前は我が家だけでなく各地で干ばつや大飢饉の影響で金銭的に苦しくなっている。
だがこの金額はなんだ。
「母上、これからどうするんです!」
クレイン家は質素であるが、貯えがある。
特にあの夫婦は揃って王宮に仕え、領地は特産物が多い。
だからこれまで援助をされても、クレイン家が困窮することはなかった。
もう一つ理由がある。
「先ほど、長い間付き合いのある商会から借金はもうできないと言われたわ。無礼ね」
「それは…」
クレイン家と関わりのある商家じゃないか。
今にして思えば、借金をしていた商会のほどんどはクレイン家の口添えでほとんど無利子に近い状態で借りていた。
「でも万一の時はオレリアに頼むわ」
「えっ…」
「表向きは縁を切っているでしょうけど、元侯爵令嬢よ…支度金ぐらいはあるでしょう?」
確かに無一文ということはないだろう。
だが、そんなにあるとは思えない。
だが、ここはオレリアの支度金にすがるしかないと思った。
――のだが…
「そんなもの新しいドレスの新調に使ったわよ?」
「なっ…」
「何ですって!」
ジュレイド家がわずかに用意された金は、オレリアが新しいドレスを買うのに使ってしまったようだ。
「だって、あのお金は私のよ?私が好きに使って何が悪いの?そうだわ…お金が足りないから出しておいてくれる?」
そう言って見せられたのは借用書だった。
「ちょっと待て、何故俺の名前に…」
「当然でしょ?私が着飾るためだもの…婚約者が出すのが当然よ」
当然って…
「貴女!何を考えているの!靴に髪飾りに宝石…こんな湯水のように使って」
「この程度で湯水何てちゃんちゃらおかしいですわ。それともフォーカス家はそんなにお金がないのですか」
「この馬鹿嫁!」
「きゃああ!」
逆切れした母上はオレリアに掴みかかり、俺は止めようとしたが二人の表情を見てぞっとした。
まるで鬼用だったからだ。
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