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第三章
21反撃の始まり
しおりを挟む男とは自尊心の塊だわ。
女も嫉妬の生き物だというけど、感情をコントロールできない人間は追い込まれると手が付けられない。
人間の心理学を学んでいた私はロイド・フォーカスがいかに自信過剰なくせに自制心の欠片もない男だと熟知してる。
これまで自分の方は上だと思っていた亭主関白気質の男が妻に強気に出られればどうなるか解り切っている。
「私が憎いですか?」
「何を…」
「ずっと貴方の劣等感を知ってました」
じりじりと詰め寄り私はこの男をとことん追い詰めてやろうと思った。
「だって貴方には何もない」
「違う…」
私をずっと下に見て、自分の方が上だと言っていた過去を思い出す。
でもそれは、私が目立つのが嫌だから。
過去を思い出すとこの男のしていることは亭主関白というよりも。
「一歩下がって夫を立てる…それは妻を守れる夫が言う言葉。貴方にそんな資格はないわ。だって甲斐性無しで責任感の欠片もない紐ですもの」
「この俺が…紐」
「ええ、私は貴方と縁を切れてうれしかった。だから最後の情けをかけた」
前世の私はどうしてここまで二人を守ろうとしたのか。
二人は私を利用していたにすぎないのに、私が死ぬ原因を作ったのは間違いなくこの二人が原因だわ。
「貴女が馬鹿の一つ覚えのようにオレリアの名を口にして悲劇の主人公となって酔っていたものね…」
「違う!俺は…」
「だけど間違いだったようね」
荒れだけ愛を囁きながらも、その愛は薄っぺらいものだった。
まさに紙のように薄っぺらいものだわ。
「貴方は誰も愛していない。自分しか愛せないのよ」
「違う…違う!」
「耳を塞いでも無駄よ。自分から目を逸らしてもね」
現実を見ることができないなんて愚かだわ。
でも、この男が現実を受け入れるのは無理かもしれない。
「今だから教えてさしあげますわ。私はこれまで一度だって貴方を愛したことはありません。仕方なく、王命だから我慢したのです」
「そんな…」
「貴方も私との婚約を望んでいなかった…何故自分だけなんて思ったのかしら」
常に自分だけが憐れむようなことを言っていたけど、自分だけが被害者ということが間違いなのだから。
それとも自分は違うとでも思ったのなら馬鹿すぎるわ。
愚かすぎると思うわよ。
「あぁぁぁぁ!」
私の言葉に心を壊したのか、悲鳴が響いた。
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