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第三章
7お父様の怒り
しおりを挟む私一人の問題ではないことから急いでお父様に手紙の事を伝えると。
「あのクソが!」
「貴方、言葉が汚いですわよ」
「何所までキャサリンを侮辱すれば気が済むのだ!」
あまり怒ると血圧が上がるのだけど、周りの侍女も必死で抑えているも聞いてくれない。
普段は理性的な人だけど、こう見えて愛妻家で子煩悩だった。
どんなに忙しくてもお母様や私の記念日を忘れたことはないのだから。
「旦那様、あまり怒るとお体に」
「エリー、何故黙っていた」
「申し訳ありません」
手紙の一件を黙っていたことを咎めているように見えるけど実際は違う。
「責めているわけではない。お前ひとりで対応できることじゃないだろう」
「承知しております」
「相手は伯爵でしかも男だ。お前の身に何かあったらどうするのだ」
「旦那様!」
つまりこういうことだ。
エリーが万一あの男に無体な真似をされた時のことを心配しているのだから。
エリーはただの使用人じゃない。
我が家の大事な家族なのだからこそ、危ない目にあってほしくない。
「良いか、今後は一人で対応するでない」
「はい…」
「けれど、これは私達の落ち度ですわよ」
お母様の言葉にお父様が頷く。
「うむ、私の考えが甘かった。いや、ここまであの女が図太く図々しいと思わなかった」
「お父様」
常に礼節を重んじるお父様はどんなに嫌いな相手でも女性をあの女なんて言い方はしない。
それはつまりだ。
完全に天敵と判断しているということになる。
「顧問弁護士だけでは足りないな。護衛をつけよう」
「そこまでなさるのですか」
「ああ、お前の身に何かあれば大変だ。約束をあっさり破るような輩だ」
確かに私と接近禁止になっているのにこんな手紙を送りつけるなんてどんな神経をしているのか。
「弁護士を代理人として今後交渉をするが…期待はできないな」
「正式に公爵家と婚約しているのを知らないはずはないのに」
「知っていてしているのだろう?おこぼれをあやかりたいのだろう」
それって、もうなりふり構わずってことじゃない。
そもそも公爵家の婚約者に復縁を迫れば、王家を侮辱するということになると気づかないの?
普通は気づくでしょう。
「つくづく馬鹿な連中だ」
「このまま大人しくしていれ没落は免れただろうに」
完全にお父様を怒らせてしまった以上、彼らの生き残る道はない。
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