上 下
92 / 136
第三章

2味方

しおりを挟む


王族との婚約はかなり危険なものだった。
オレリアの時でさえ、嫉妬心を抱く令嬢からの嫌がらせはあった。

まぁ私が陰で握りつぶしたけど。

「でも妙ですわ」

「何がですの?」

エレーナ様がきょとんとする。
ただし新しい実験の妙な薬を手に握ったままだけど。


「これだけ噂になっているのに嫌がらせが一つもないのです。毒薬を顔にかけられるか、植木鉢を落とされる程度は覚悟していたのですが」


「いや、過激すぎるだろう!」

「すでしょうか?」

オレリアの時はそこまでなかったけど、私の身分は伯爵令嬢。
高位貴族ならば表立って手を出せなかったけど私は異なると思ったのだけど。


「キャサリン様、貴女馬鹿ですの?馬鹿ですわね、ここまで馬鹿とは思いませんでした」

「エレーナ、そこまで馬鹿と何度も言うんじゃない」

「キャシー様はおっちょこちょいですね!」

言っておくけど、お馬鹿ヒロインの貴女だけには絶対に言われたくないわ。


「キャシー、君は今や賢者と呼ばれている。手を出せば極刑だ」

「はい?」

賢者って何?
それ以前に極刑とはなんぞや?


「フィル様、意味が解りません」

「キャサリン様はお勉強ができるのに哀れなまでに血の巡りが悪いのですね。いいえ、ご自身のことに関してはポンコツだと解りました」

「エレーナ様、泣いていいですか」

「どうぞ」


本当に泣いていい?
何でこんなに酷い事ばかり言われないとだめなの?

私は何か悪い事をした?


「理由は君の功績もあるが、女性避けるフィルが自ら選んだ婚約者だ」

「おい!」

「この際ハッキリ言っておいた方がいいだろ?」


フィル様の婚約者だからという理由が解らない。


「父は叔父上にずっと負い目を感じていた。フィルにもだけど」

「あー…それは」

前代国王と正妃の間に生まれ、誰よりも王に相応しいと言われながらも王位継承権を返上し、フィル様も同様だ。

その為色々口さがなくいう輩も少なくない。
苦労もされていたが、公の場で陛下は過度な庇い方をされなかったことだろうか。


だけど王弟殿下は納得されていると思うけど。
優秀な方であるけど権力や地位に執着されない方だと宰相閣下から聞いていたし。


「母と父は叔父上に対する罪悪感もあるがフィルには幸せになって欲しいと思っている」

「はい」

「だが、環境が許さない。故にだろう」


顔を歪めながら語られたのは苦労三昧な公爵家のこれまでの事だった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親友が奪ったのは美形の婚約者、でもそれは偽の姿なので後悔しても知りませんよ?

coco
恋愛
親友が私の婚約者を奪った。 彼はこの国一の美形と言われる人物。 親友と元婚約者は、私の前から姿を消したが…。 でも彼のあの姿は、偽の姿。 しょせんは幻の様なものなのに…後悔しても私は知りませんよ?

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【改編中】悪女と罵られたので退場させていただきます!

つくも茄子
恋愛
ブランシュ・クリスティーネ・ヴァレリー公爵令嬢は婚約者の王太子に訴えられ裁判にかけられる。明らかに冤罪と分かる内容。にも拘わらず「有罪」の判決を受け、国外追放になってしまった。何故、王太子はこのような暴挙にでたのか?王太子の横にいる男爵令嬢は彼の子供を身籠っているらしい。国王とヴァレリー公爵の不在中に起こった出来事は国そのものを暗雲をもたらす。 祖国崩壊。 そして帝国貴族としての始まり。 それは彼女にとって良かったのか悪かったのか。様々な思惑の中をブランシュは生きていく。帝国貴族として、公爵家の跡取りとして。皇太子の後宮入りをしたブランシュだったが、その背景は何やらきな臭い予感が・・・。 11月25日より改編いたします。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

お前のせいで不幸になったと姉が乗り込んできました、ご自分から彼を奪っておいて何なの?

coco
恋愛
お前のせいで不幸になった、責任取りなさいと、姉が押しかけてきました。 ご自分から彼を奪っておいて、一体何なの─?

旦那様、離婚しましょう

榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。 手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。 ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。 なので邪魔者は消えさせてもらいますね *『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ 本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......

悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子
ファンタジー
公爵家の娘である私は死にました。 何故か休学中で婚約者が浮気をし、「真実の愛」と宣い、浮気相手の男爵令嬢を私が虐めたと馬鹿げた事の言い放ち、学園祭の真っ最中に婚約破棄を発表したそうです。残念ながら私はその時、ちょうど息を引き取ったのですけれど……。その後の展開?さぁ、亡くなった私は知りません。 世間では悲劇の令嬢として死んだ公爵令嬢は「大聖女フラン」として数百年を生きる。 長生きの先輩、ゴールド枢機卿との出会い。 公爵令嬢だった頃の友人との再会。 いつの間にか家族は国を立ち上げ、公爵一家から国王一家へ。 可愛い姪っ子が私の二の舞になった挙句に同じように聖女の道を歩み始めるし、姪っ子は王女なのに聖女でいいの?と思っていたら次々と厄介事が……。 海千山千の枢機卿団に勇者召喚。 第二の人生も波瀾万丈に包まれていた。

処理中です...