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第二章

51不公平な幸福~オレリアside③

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公の場だけの演技だと思っていた。
仲睦まじい夫婦なんていないと思っていた。

でも――。


「伯爵閣下、聞きましたぞ。ご息女があの数式を理解されたとか」

「聞けば専門家とも対等に哲学の話ができると」


サロンでクレイン伯爵にキャサリンをここぞとばかりに褒めちぎる言葉を聞かされる中。


「お褒めの言葉をいただき光栄です。自慢の娘ですからな」

「伯爵、随分と親ばかだな」


お父様が呆れた表情で言うも。

「一人娘ですから当然です。侯爵様もではありませんか?」

「えっ・・・」

「あと数年でこの手から離れて行くのが悲しい。いや、今からでも婚約を白紙にして婿を取りたいところです」

「ここまで来ますと、呆れますな!」

「はははっ!」

お父様は口ごもっていたけど、他の人達は何が楽しいのか笑っていた。


「そんな真似できるわけが…」

「だとしても、娘を不幸にするならば私は今の地位を捨ててもかまいません。大事な宝物です。あの子は私達のすべてなのです」


酒に酔っているのが解る。
それでも、私の心がどす黒く染まるのが解った。


あんな風に堂々と娘を愛しているなんて…


「伯爵閣下、そろそろ」

「結婚式で泣くだろうな」

「ああ、普段から娘命だからな」



羨ましいと思う一方でずるいと思った。

私の方が恵まれているはずなのに!
どうしてキャサリンは私が手に入れられない物を手に入れるの?

だから私は…


少しぐらい困らせてもいいだろうと思った。


それにキャサリンは伯爵令嬢だ。
私が命令すれば従わざるを得ないし、彼女は私のおかげでいい思いをしているのだから。

私の事を好きなんだし大丈夫。


そう思っていたのに。

王立学園に入学してからキャサリンは変わった。

今までは私の言うことを聞いてくれた。
困った表情をしながらも私が願えば何でも聞いてくれたのに、私と…私達と距離を置き始めたのだ。


そして問題が起きた。
不幸な事故で怪我を負わせてしまった。


その所為で私が学園から悪女にされた。
少し顔に怪我をしただけなのに。

貴族令嬢として顔に傷があるのは傷物となるけどキャサリンは身分の低いし、怪我をする前から美人ってわけじゃない。

だからこそまで騒ぐことじゃない。
なのにロイドとキャサリンが婚約解消となり、私とロイドの浮気説が上がった後に私達が婚約を結ばされてしまった。


私はロイドを愛していない。
だって私が好きなのは。


私が愛しているのは…


フィルベルト様なのに!

神様は残酷だわ。

更に私に酷い仕打ちをされた。


キャサリンがフィルベルト様と婚約をしたと知らされたのだった。

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